首位を独走するセルティックスから劇的な逆転勝ち
キャバリアーズのドノバン・ミッチェルは左膝を痛めて3試合連続の欠場。ホームにセルティックスを迎える大一番ではあるが、ティップオフ前の話題はミッチェルの状態に集中した。ミッチェルのケガは左膝の骨挫傷で、さらに3試合を休養にあて、その時点で状態を確かめると指揮官J.B.ビッカースタッフは説明し、「腱鞘炎のようなもので、時間の経過とともに進行して痛みが出る。今は休養が必要だ」と続けた。
チームトップの平均28.0得点を挙げるエースで、精神的なリーダーでもあるミッチェルがプレーオフを万全のコンディションで迎えられるのか。試合前にチーム周辺には重い空気が漂っていた。そして試合ではセルティックスに主導権を奪われ、第3クォーター途中にエバン・モーブリーが足首を捻ってプレーを続けられなくなると、その時点で7だった点差はどんどん広がっていった。
第4クォーター開始時点で71-87。そこから3分間でキャバリアーズは得点がなく、71-93まで差を広げられた。首位を快走し、11連勝中のセルティックスの快進撃は止めようがない──。誰もがそう思ったはずだが、キャブズはここから34-11のランで試合をひっくり返した。
主役を演じたのはセカンドユニットのディーン・ウェイドだ。ウェイドはキャリア5年目の中堅だが『主役』を張るタイプではなく、今シーズンは平均5.1得点。そのウェイドが突如として火を噴いた。長身のルーク・コーネットの上から3ポイントシュートを連続で沈めて、キャリス・ルバートとのピック&ロールからダンクを決め、フリースローでも得点を繋ぐ。ダリアス・ガーランドのキックアウトから3ポイントシュート連続成功と、放ったシュートすべてを決め続け、残り2分半でキャブズにリードをもたらした。
ウェイドは試合後にこう語る。「ただ流れのままにプレーして、気持ち良くシュートを打つことができた。あんな感じで連続でシュートを決められて気分は最高だった。何本かシュートが決まるうちに、会場の空気が変わったよね。観客が立ち上がり、それから飛び跳ね始めた。最高の雰囲気だった」
第3クォーターまでのウェイドはフィールドゴール4本中成功わずか1。「前半はシュートが決まらなかったけど、ハーフタイムにチームメートが『100回連続で外してもいいから、チャンスがあれば躊躇なく打て』と励ましてくれた。そのおかげで自信を持てたんだ」と彼は言う。「DG(ガーランド)からパスが出てきたら、コートのどこにいようと打つつもりだった。落ち着いてプレーできていたし、リムが大きく大きく見えた。点差のことは頭になく、ただ良いプレーをすることだけを考えていた」
ただ、セルティックスも簡単には勝ちを譲らない。粘り強いディフェンスでガーランドがアリウープを狙ったパスを奪い、クリスタプス・ポルジンギスのバスケット・カウントで再びリードを奪う。残り39秒からのキャブズの攻め、ミッチェルに代わるエースのガーランドがゴール下まで攻めるも、窮屈な体勢で打たざるを得なかったシュートがリングに嫌われる。万事休す、と思った瞬間にリムに向かって跳んだのはウェイドだった。弾き出されようとするボールをダンクでねじ込み、105-104と再逆転。最後はジェイソン・テイタムのシュートを阻みに行ったガーランドがファウルをコールされるも、チャレンジで判定が覆り、キャブズが勝利を手にした。
勝利を決めたプットバックについてウェイドは「ただ一生懸命やっただけさ」と振り返る。「どんな小さなチャンスでもあきらめず、全力でフロアを駆けてオフェンスリバウンドを狙った。先にあきらめるヤツにはならない。それが僕の考え方だ。それはチームも同じ。僕らは自分自身とお互いを信じ、戦うことをやめない。何が起ころうとも協力し合い、全力でプレーする。その姿勢が第4クォーターを僕らにとって素晴らしいものにしてくれた」
試合前にはミッチェルの長期離脱の懸念ばかりが語られていた会場の雰囲気は、がらりと変わっていた。ウェイドはこう言う。「セルティックスは素晴らしいチームだけど、僕らも良いチームだ。この勝利は自信になるし、勢いを与えてくれるよ」