「記録を打ち立てた試合で負けたくはなかった」

現地3月2日のナゲッツ戦、レブロン・ジェームズがNBA通算4万得点を記録した。大台達成まで残り9で迎えたこの試合、第2クォーターが始まってすぐにマイケル・ポーターJr.をドライブでかわしてレイアップを沈めて記録達成。その後にタイムアウトが取られると、会場のモニターではレブロンの通算得点の歩みを振り返る動画が流され、偉業を称えるファンに彼が応える時間が設けられた。

「このリーグで何かを最初に成し遂げるのは最高にクールだ」とレブロンは言う。「4万得点は誰も到達していない数字。キャリアのこの時点で僕がその立場にいられるのは素晴らしいよ」

キャリア通算4万点という記録がいかに飛び抜けたものであるかは、それに続く通算得点記録で分かる。レブロンに抜かれるまで39年間に渡り歴代最多記録だったカリーム・アブドゥル・ジャバーの3万8387得点、カール・マローンの3万6928得点、コービー・ブライアントの3万3643得点、マイケル・ジョーダンの3万2292得点、ダーク・ノビツキーの3万1560得点、ウィルト・チェンバレンの3万1419得点と偉大な選手たちの名前が続くが、通算3万得点を超えているのはここに名前を挙げた7人だけ。そしてレブロンだけが4万得点に達した。

レブロンはNBA史上最年少で通算1000得点を記録した選手であり、優勝とファイナルMVP、シーズンMVPをそれぞれ4度経験している。21年のキャリアすべてで得点ランキング上位20位に入り、連続2桁得点記録はこれで1205試合となった。彼は言う。「記録を狙ったことはこれまで一度もない。すべてプレーする中で自然に達したものだ。キャリアをスタートさせる時に『得点記録を狙おう』なんて気持ちは全くなかった。僕はただ良いプレーをしたいと思い、試合を重ねてきた。僕はまだプレーしているし、得点できる。プレーする限りは記録は伸びるだろうね」

ただ、すべてが上手くいく夜ではなかった。この時点でレイカーズは8点のリードを奪い、前半は試合の主導権を握っていたが、ナゲッツは彼らの『天敵』である。昨シーズンのカンファレンスファイナルではスウィープ負け（4戦全敗）。後半はその苦い記憶が思い出される展開となった。第3クォーター途中、ニコラ・ヨキッチにわずか2分半で13得点を奪われレイカーズはリードを失い、第4クォーター残り4分11秒にレブロンが勝ち越しのシュートを決めて110-108としたものの、その後は4-16のランを浴びて114-124で敗れた。

お祝いムードは半減。レブロンは「僕にとって大事なのは常に勝利だ。記録を打ち立てた試合で負けたくはなかった。僕らは良いバスケをしたけど、勝つことができなかった。コート上のすべての瞬間を楽しんだけど、結果は悔しいものになってしまった」と言う。

ヨキッチとジャマール・マレーのピック＆ロールから繰り出される多彩な攻めをレイカーズは止められない。オフェンスでも何か重要な欠陥があるのだろう。ナゲッツとの試合は常に接戦になるが、毎回クラッチタイムで攻守とも差を付けられて敗れる。「試合のラスト何分かになると決まってナゲッツが優勢になる。彼らが思い通りにプレーして、僕らはそうならずにフラストレーションを溜める結果になる」とレブロンは振り返る。

レブロンにとって通算4万得点は『クール』なマイルストーンだが、彼の目標はあくまで試合に勝ち、シーズンを制することだ。周囲はレブロンの偉大な記録達成へのお祝いムード一色だったが、レブロン自身はライバル相手にまたしても同じような形で負けた悔しさを噛み締めていた。ナゲッツの完璧な攻守の完成度にどう立ち向かい、乗り越えるか。レギュラーシーズンでの3度の対戦はこれですべて終了した。次の対戦があるとすれば、それはプレーオフとなる。勝ち進めば、いずれは当たる相手。そこで結果を出すことにレブロンの意識は向いている。