「バスケはチームスポーツなので、チームとしてプレーしたほうがいい」
前田顕蔵ヘッドコーチがフラッシュインタビューで開口一番に「危なっ」と語ったように、京都ハンナリーズとの第1戦はスリリングな展開となった。
30-15とスタートダッシュに成功し、試合のほとんどを支配していた秋田だったが、終盤に岡田侑大とマシュー・ライトに連続で3ポイントシュートを許し猛追されると、チャールズ・ジャクソンのフリースローによって残り45秒に79-80と逆転された。さらに次のオフェンスではスティーブ・ザックが痛恨のムービングスクリーンをコールされてしまった。しかし、直後のディフェンスで、岡田がファンブルした瞬間を見逃さずに中山拓哉がボールを奪う。そのままプッシュしフィニッシュまで持ち込んだが、これが外れてしまう。万事休すかに思われたが、カバーに走りこんでいたジェフリー・クロケットがオフェンスリバウンドを獲得し、冷静にゴール下を決め、劇的な逆転勝利を収めた。
「自信がなくなるようなシチュエーションが垣間見られた」と前田コーチが振り返るように、最大19点のリードをひっくり返され、ゲームクロージングにも課題を残した。だからこそ、「勝つ習慣をつけないといけない」と反省点を挙げたが、「(お客さんが)会場で盛り上がり、楽しかったって帰れるのが1番うれしいので、まず勝ててよかったです」と、ホーム初勝利を素直に喜んだ。
劇的な逆転ゴールを決めたクロケットは「ホームで勝てていない状況だったので、絶対に勝たないといけないと思ってプレーしていました。その気持ちが表れた、最後のシュートだったと思います」とラストプレーについて言及。さらに「悪い時間もありましたが、最終的に必要な時にディフェンスでストップできて、得点もできました。チームで勝ち取った勝利だと思います」と、チームでの勝利を強調した。
クロケットはこの試合でチームハイとなる14得点を挙げたが、ここまで5試合の平均スタッツは6.4得点、6.0リバウンド、1.8アシストと決して突出していない。だが、前田ヘッドコーチはそのチームファーストな部分と、敏捷性に優れたディフェンス力を高く評価している。
「今日もポイントであったんですけど、プレスで前から当たってディフェンスで完全にリズムを持っていけるのはやっぱり彼の強みです。オフェンスリバウンドだったり、ディフェンスでアクティブにできるところは彼の持ち味だと思います。強引に点を取りに行かないですし、チームに沿ってやってくれようとしていて、今日もですがすごく助かっています」
Bリーグは得点ランキングの上位のほとんどが外国籍選手で占められている。チームはその得点力を求めて彼らを中心に据えるが、クロケットのように献身的なプレーができる外国籍選手の存在も欠かせない。そしてクロケット自身もその大事さを理解している。
「自分の性格が出ているというか、チームのためにプレーするほうがしっくりくるんです。得点の取り方もオフェンスリバウンドからの得点やスペーシングからドライブに合わせての得点が多く、自分を中心にしてプレーしていません。バスケはチームスポーツなので、チームとしてプレーしたほうがいいと思っていて、それが自分のプレースタイルに表れていると思います」
また、クロケットは前節の島根スサノオマジックとの第1戦で、試合を延長に持ち込む劇的な同点3ポイントシュートを沈めた。2節続けて、試合の命運を分けるシュートを決めたわけだが、それでも自分の手柄にしようとしない。
「クラッチなシチュエーションであえて自分がフィニッシャーなろうとはしていません。でも勝ちたい気持ちは常に持っていて、島根戦の3ポイントシュートもその気持ちが前面に出た結果です。今日の最後のシュートもオフェンスリバウンドに行かなければ生まれなかったですし、入るか入らないかは別として、その大事なポジションにいれるかどうかは大きいと思っています」
その身長に見合わぬ軽快なフットワークでチームが信条とするディフェンスの要となりつつ、チームバスケットの遂行を一番に考えるクロケット。彼の存在は、勝ち癖をつけなければならない現在の秋田において非常に重要なピースだ。
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