勝ち続ける以前に『戦い続ける』難しさ
ナゲッツのヘッドコーチ、マイク・マローンが優勝パレードの場で『ダイナスティ』(王朝)と高らかに宣言した通り、ナゲッツは連覇を目指すシーズンとなります。ニコラ・ヨキッチとジャマール・マレー、そしてマイケル・ポーターJr.とドラフトで指名した若手を中心とした熟成されたチーム力を前面に押し出し、圧倒的な強さで優勝しただけに、実力的に優勝に最も近いチームであることは間違いありません。
しかし、2018年のウォリアーズ以降は毎シーズン異なるチームが優勝していることが示すように、連覇とは簡単なものではありません。コアメンバーが変わらず、しかも30歳以下の選手で構成されているナゲッツのポテンシャルは変わらなくても、ケガや疲労が溜まっていく中で勝ち続けるというのは難しく、実際にマレーは出場予定だったワールドカップをコンディション不良でキャンセルすることになりました。プレーオフを通して素晴らしいパフォーマンスを見せた選手が、その2カ月後の大会に出場できなかった事実は、勝ち続ける以前に『戦い続ける』難しさを物語っています。
同時にナゲッツの継続的なチーム作りが成功した背景には、ヨキッチの頑丈さがありました。いまや世界最高の選手であるヨキッチですが、最も素晴らしいのは8年のキャリアで大きなケガをすることなく過ごしてきたことで、それはナゲッツがポイントセンターという特殊な存在を中心としたチーム戦術を磨き上げてこられた理由でもあります。マレーやポーターJr.がシーズン単位での欠場を強いられた時期さえ、他の選手がヨキッチ中心の戦術を理解する時間として活用された感すらありました。
今オフのナゲッツはプレーオフのローテーションメンバーであったブルース・ブラウンとジェフ・グリーンが移籍し、ガードとビッグマンそれぞれの選手層が薄くなりました。加えてグリーンの役割を埋める最右翼だったブラッコ・チャンチャーが左膝前十字靭帯断裂の大ケガを負い、さらに苦しい状況に追い込まれてしまいました。連覇のカギは選手層の問題を解決できるかどうかにあります。
ベテランのジャスティン・ホリデーを補強してはいますが、育成で成功してきたナゲッツらしく若手の成長で穴を埋めていくのが基本ラインです。クリスチャン・ブラウンやジーク・ナジはすでにローテーションプレーヤーとなっていますが、ここに2年目のペイトン・ワトソンやドラフト29位指名のジュリアン・ストローサー、32位指名のジェイレン・ピケットが競争に加わります。
通常の若手であれば一定の活躍をすれば認められますが、連覇を目指すチームとしてはプレーオフでチームの穴として狙われない選手である必要があります。現時点でナゲッツには7人のルーキーがロスター登録されていますが、ポテンシャルよりも完成度が求められるチーム事情の通り、一番若いストローサーでも大学で3年間プレーした21歳となっており、即戦力候補の若手をキャンプから試していくことになりそうです。
『ダイナスティ』を築く可能性が十分にあるナゲッツですが、そのためにはチーム全体の底上げは欠かせません。優勝したからこそ新戦力を取り込み、多くのチャレンジをするシーズンになりそうです。