文・写真=鈴木健一郎

シーズン終了から今まで「一度もボールを触ってない」

6月26日に行われた横浜ビー・コルセアーズの新体制発表会見、一人ずつ選手が出てくるシーンで、参加したブースターから一際大きな歓声で迎えられたのが川村卓也だ。昨シーズンは1試合平均29.5分のプレータイムを得て13.4得点を記録。数字以上に記憶に残る「ここぞの場面」での働きが目立っただけに、ファンのリアクションは当然とも言える。

チームの始動は7月中旬からの予定で、まだオフの真っ只中。川村は「完全にオフモードなので、何をしゃべったらいいのかも分かりません」と笑う。

「シーズンが終わった瞬間から気持ちも身体も完全にバスケットボールを忘れて、家族と過ごす時間を大切にしています。一度もボールを触ってないです。それが僕の切り替えのやり方です。完全にバスケットから離れて家族と過ごすことでリフレッシュできるので」

確かに、チームのスーツを着ていてもシーズン中の川村とは雰囲気がちょっと違う。「シーズン中は子供らと土日に遊ぶこともできないですし、オフの時間は家族に費やすのが僕にとってはベストです。子供が学校に行くときも帰ってきてからも一緒で、寝る時も一緒です。そういう意味では普段以上に笑顔になってくれているのかなと思います」

そう話す川村の表情はコート上で戦う鬼気迫るものとは全く違う『父親』のそれだった。

「『ビーコルは良いチームだな』と世に知らしめたい」

それでも来るべきBリーグ2年目のシーズンに、少しだけ意識を切り替えてもらった。「そうですね、やる時が来たらしっかりやるのが僕らの仕事なので。もちろん良い準備をして2年目のシーズンを迎えるつもりです」と川村は言う。

「中地区でしっかりと勝ち星を重ねて、交流戦もイーブンで乗り切る。それで30勝30敗であればプレーオフが見えてくると思います。その上を目指して新シーズンを迎えたい」

川村を始め、中核となったメンバーの多くが残留を決めた。「昨シーズンは悔しい思い、苦しい思いをいっぱいしてきました。そのメンバーが残ったことには意味があると思っています」と川村は言う。

昨シーズンに続き、川村も含めた『個性派集団』のチームとなる。「選手のキャラクターが集合体になったのがビーコルです。正直、昨シーズンは個性をまとめられなかった。個性を少し勘違いしていた部分もありました。新シーズンはまとめ役も買って出て、そのクセをうまくまとめたいです」

「僕自身、ずっと自分のキャラを貫いてここまでやってきました。チームのカラーはそれぞれあるので、他のチームのことを言うつもりはないですが、ウチに関しては各プレーヤーが自分の良さや個性を際立たせられるチームにしていきたい。僕も若手の時とは違って、バスケット人生の中盤に来ています。個性豊かなビーコルをプレーオフに出させて、プレーオフでさらに一皮むけたい。そして『ビーコルは良いチームだな』と世に知らしめたい。それが新シーズンの僕の目標です」