文=大島和人 写真=B.LEAGUE

SR渋谷に対し「嫌なイメージを植え付けられた」

川崎ブレイブサンダースは5日、オーバータイムの激闘を制し、サンロッカーズ渋谷から今シーズンの49勝目を挙げた。レギュラーシーズンの1試合を残して、B1の全体1位も決まった。

17点ビハインドからの逆転劇だったが、篠山竜青キャプテンは勝因をこう説明する。「我慢ですね。最終的にはディフェンスの部分で、粘って粘ってやれたところが最後に勝てた要因。(10得点に終わった)第3クォーターはオフェンスの部分でなかなかアジャストできなかったのがまずかったけれど、そこから切れずに我慢してついていけた」

第4クォーターに入った時点でのスコアは51-63。SR渋谷が残り3分28秒にタイムアウトを取った時点で、まだ7点のビハインドが残っていた。ここで北卓也ヘッドコーチは藤井祐眞を起用し、辻直人、篠山を併用する3ガードの策を取った。篠山はこう振り返る。

「相手のメンバー、北さんの判断によると思うんですけど、僕個人として非常に手応えは感じました。3人とも誰でもボールを運んでそのままピック&ロールで崩せるというのが一つある。あと自分と祐眞はディフェンスを武器にしているし、祐眞と一緒に出た時も意思の疎通がしっかりできている。阿吽の呼吸でお互いカバーしながら、思い切りの良いディフェンスができるイメージを持っていた」

篠山と藤井が渋谷のガード陣に激しくプレスを掛けて攻めを封じ、攻勢の土台になった。

渋谷は現在、中地区の3位で、このままだと「ワイルドカード2位」の枠に入る。6日の川崎戦で渋谷が勝利し、中地区2位の三遠ネオフェニックスが第32節を連敗で終えない限り、川崎と渋谷が来週のクォーターファイナルで再戦することになる。

「渋谷への意識は?」と問われた篠山はこう答えていた。「もちろんありました。嫌なイメージを植え付けられたと思いますし、川崎ファンの後押しが非常に大きかった。改めて第1シードの、ホームコートでできるところの大きさも感じました」

5日の試合は間違いなく3784人の熱気が終盤の反撃を後押ししていた。13日、14日のクォーターファイナルは会場が川崎のとどろきアリーナでなく、トッケイセキュリティ平塚総合体育館だが、再びホームの後押しを期待できるだろう。

「結果としてはチーム全体にとってプラスになった」

この1勝の収穫について篠山はこう語る。「さらに自信が深まったと思います。それに増して『勢い』みたいなものも今日の試合で出たと思う。レギュラーシーズンの最後にこういう試合ができて、チームとして『良かった』という言葉では表せられないくらい」

川崎の今季を振り返れば、ライアン・スパングラーが1月末から2カ月以上も離脱。辻直人も腰痛などで万全でない時期が多かった。ただそんな中でも層の厚さを見せつけ、チームは全体1位を勝ち取った。篠山はこう胸を張る。

「ニック(ファジーカス)とかマドゥ(ジュフ磨々道)が柱としてたくましくチームとして支えてくれたのも大きいけれど、若手の成長が一番大きかった。ケガはしないことが一番いいですけど、2人のケガによって今シーズンはチーム力が上がったと思う。ケガの功名じゃないですけれど、レギュラーシーズン中に2人とも帰ってこれたし、結果としてはチーム全体にとってプラスになった」

もちろんチャンピオンシップは「第何シードで行こうが負けてしまえば意味がない」と篠山が言うシビアな舞台。しかし川崎は15-16シーズンのNBLチャンピオンで、篠山も含めた主力選手たちは皆タイトルの味を知っている。

篠山はチャンピオンシップに対する自信をこう口にしていた。「優勝を何回かしていますけれど、優勝したシーズンに雰囲気とか流れが非常に似ている。意気込みとかそういう感じでなく、俯瞰的に冷静に『こういう時って優勝するんだろうな』という気持ちになっている」

「ファイナルで倒したい敵はどこか?」という記者の問いに対しては、しばらく首をひねってこう返してきた。「相手はどこでもいいです。ただ優勝するイメージしかないので」

キャプテンの言葉から自信と強気、そしてチームの充実がよく伝わってきた。篠山と川崎は最高の状態で、B1初年度の覇権獲得に向かおうとしている。