文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

復帰して改めて感じる「バスケットの楽しさ」

昨日行われた川崎ブレイブサンダースと横浜ビー・コルセアーズの神奈川ダービー第1戦、快勝を収めた川崎の中で要所に存在感を示したのが辻直人だ。

4月14日の富山グラウジーズ戦で捻挫し、プレータイムを抑えての出場が続いたが、昨日の試合では24分間の出場で14得点を挙げ、復調ぶりをアピールした。

ニック・ファジーカスとのピック&ロールでズレを作り、冷静な判断力で横浜ディフェンスを攻略した。「コンディション云々じゃなく、元々持っている力を出せた」と自信をのぞかせる。

今シーズンになって新たなプレースタイルを模索したことに腰のケガが重なり、得意のシュート確率が安定しなかった辻だが、昨日の試合では6本中4本の3ポイントシュートを沈めている。「捻挫してからシュートタッチが良くなってきて、こういうこともあるんだなあ」と辻は笑顔で語った。辻が左足首の捻挫をしたのは4月14日の富山グラウジーズ戦。当初は全治3週間と発表されたが、1週間後の前節に復帰。この時はまだ様子を見ながらのプレーだったが、昨日は持ち前の積極性が全開になった。

ただ、ディフェンスに関しては、まだケガの影響が残っており、「スクリーンを避けてからのディフェンスで、まだ付いていけない部分がある」と完治までには少し時間を要するようだ。

それでもケガの多いシーズンを乗り越え、「バスケットの楽しさを改めて感じた」と語る表情には充実感が表れていた。

エンターテインメント性の追求へのこだわり

Bリーグが掲げるエンターテインメント性の追求は、どこまで観客に浸透していて、選手たちはどこまで意識しているだろう。

間違いなく言えることは、エンターテインメントを強く意識し続ける数少ない選手の一人が辻だということだ。昨日の試合でも、第3クォーターに4本目の3ポイントシュートを決めた後、観客を煽るパフォーマンスをしている。その上、ボールがネットを通過する前にシュートが決まると確信して両手を上げた。

「打った瞬間入ったと思って、本当は打った時に振り返ろうと思ったんですけど、外れた時のことを考えて万が一のためにギリギリまで待った」と明かす。シュートを放ってボールが通過するわずかの間に、「保険をかけすぎてギリギリになってしまった」という思考を巡らしているから驚きだ。

出場が決まっているチャンピオンシップについて話を聞くと、「まだ始まってもいないのに緊張する」と意外な言葉が返ってきた。それでも旧NBLファイナルMVPの『お祭り男』は短期決戦の場でこそ輝きを放つ。ケガに苦しめられたレギュラーシーズンの借りをきっちり返すだろう。

あらためてプレーできる喜びを実感した辻は、プロフェッショナル精神を持ち、これからも観客を魅了していく。