文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

悪い時でも前向きな気持ちをキープできる『強さ』

ファイナルでも圧倒的な強さを見せて3戦全勝、今季のJX-ENEOSサンフラワーズは、シーズン全勝で9連覇を達成した。この盤石の強さをもたらした大きな要因となったのが、宮澤夕貴の3番ポジション、スモールフォワードとしての大きな成長だ。

昨季までの宮澤といえばインサイドを主戦場とし、3ポイントシュートに代表されるアウトサイドシュートでは物足りない部分が否めなかった。しかし、今季はシーズン開幕戦から積極的に3ポイントを放っていき、チーム1の長距離砲と言えるほどの活躍を披露する。その結果としてJX-ENEOSのオフェンスは内と外のバランスが向上し、これまで以上の破壊力を見せるようになった。

宮澤のステップアップがあったからこその無敗優勝と言っても過言ではない。

大きな飛躍を果たした今シーズン、一番の大きな変化はどの部分だったのか。宮澤は精神面と語る。「メンタルが一番変わりました。今までは消極的だったのですが、今はどんなに悪い時でも前向きに気持ちを持てるようになりました。3ポイントシュートを打てるようになったのも大きいですが、自分として精神面が一番変わったと思います」

このメンタルの変化は、3ポイントシュートを打っていく上での大きな助けとなった。バスケットボールにおいてシュートは水物であり、どんなに優れた選手であっても入らない時は入らない。距離の長い3ポイントシュートでは、その傾向はより強くなる。しかし、今季の宮澤はたとえシュートの調子が悪い時でも、躊躇することなく3ポイントシュートを打ち続け、それがチームにとってオフェンスのリズムを崩さないことにもつながっていった。

「前は入らないと『打ちたくないな』と思うこともありました。ただ、今回のファイナルは3戦ともシュートが入らなかったですが、そういうことはありませんでした。今はシュートが入らない時でも、いつか入ると思えるようになっています。打ち続けることが自分の役割であり、自分が打つべきところで打たないとオフェンスが止まってしまう。シュートを打つことが、自分の役割であることは心掛けています」

『もっとできるようになりたい』というモチベーション

今回のファイナルについて「オフェンス面はまだまだできたというのが率直な感想でしたが、ディフェンス面では我慢ができて、トヨタさんを抑えられたのが結果につながりました。JXはディフェンスを頑張ってからのバスケットボールなので、それができたのが良かったと思います」と振り返る。

また、勝ち続けることによるモチベーションの低下がなく、シーズンを通して戦い抜けた理由をこう語る。「勝つことが当たり前の雰囲気にあって選手の一人ひとりが成長していく。それを目標にして頑張ってきました。自分自身で今日の試合は良かったと思っても、トムさんと話した時、『ここがダメだった』、『あそこがダメだった』、『もっとできる』と言われ、やはり甘い部分があること、もっとできることを分からせてもらった。『もっとできるようになりたい』というモチベーションは常にありました」

この高い向上心は、来シーズン以降のさらなる進化をすでに見据えている。「まず、3ポイントシュートを打てるようになった時点で去年よりは成長できました。ただ、後半戦になると相手もアジャストし、シュートを封じようと激しく寄せて来ました。シュートモーションも遅いので、来季はもっと速くしていきたいと思います」

ここ数年、JX-ENEOSと言えば、リオ五輪でも日本代表の中心を担った吉田亜沙美、渡嘉敷来夢、間宮佑圭の『ビッグ3』がチームの屋台骨となっていた。それが今シーズン、宮澤もチームの柱と呼べる存在へと成長した。これまでの『ビッグ3』から『ファンタスティック4』へ。宮澤の躍進で、『女王』の強さがより盤石となったことを証明した今シーズンだった。