[CLOSE UP]吉田亜沙美(JX-ENEOS)『女王』を牽引する司令塔、ファイナルを戦うモチベーションは「トムのために」

2017/03/08
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦、(c)WJBL

「五輪の時の気持ちが戻っていると言ったら嘘になります」

10月7日の開幕からここまではあっという間だった。Wリーグは今日からプレーオフ・ファイナルがスタート。リーグ8連覇中のJX-ENEOSサンフラワーズが、トヨタ自動車アンテロープスと対戦する。

JX-ENEOSのキャプテンである吉田亜沙美は、「ファイナルの舞台に立てることを本当にうれしく思っています。相手がどことか関係なく、自分たちのバスケをやることが優勝につながると思います」と優勝に向けた抱負を語る。

もっとも、吉田にとってリオ五輪後に迎えた今シーズンは簡単ではなかった。キャリアのすべてを懸けて臨んだオリンピックでの戦いを終え、新しい目標を見いだせないままのシーズンだった。「開幕するまでは不安でした。オリンピックを目標にずっとやってきて、それが終わった時に、モチベーションを上げていくのが難しかったので。ずっと不安に思いながら入ったシーズンでした」と、吉田は率直に語る。

「オリンピックの時の気持ちが戻っていると言ったら嘘になります。そこを意識的に変えていかなきゃいけないと思いながらのシーズンでした」

「オールジャパンで優勝して、次はリーグとなって、ようやく少しずつ気持ちが上がってきています。私はこのリーグでもう一度、自分の夢や目標を探したいと思っています。まだ探している途中なので」

「トムのバスケットに追い付き、追い越したい」

不安を抱えながらのプレーではあったが、吉田はポイントガードとして見事にチームを引っ張ってきた。JX-ENEOSはレギュラーシーズン27戦全勝。プレーオフに入っても全く危なげない戦いぶりで4連勝。ここまでの31勝のうち、最終スコアで2桁のリードを奪えなかったのはわずか1試合しかない。

昨シーズンのJX-ENEOSも圧倒的な強さを印象付けたが、それでもレギュラーシーズンには4敗を喫していた。8連覇中の過去と比べても、今シーズンのJXには隙がない。

吉田を始め、間宮佑圭と渡嘉敷来夢の『リオ組の主力』がチームを盤石に支えていることに加え、宮澤夕貴が五輪を経てシューターとして覚醒。セカンドユニットも含め、戦力は他を圧倒する充実ぶりを誇る。ただ、JXの『隙のなさ』を支えているのはヘッドコーチのトム・ホーバスだ。リオ五輪では内海知秀のアシスタントを務めたホーバスは、今シーズンからJX-ENEOSのヘッドコーチに。『女王』に刺激を与え続け、緩みのないバスケを展開させてきた。

吉田は言う。「セミファイナルは良いバスケができたんですけど、ロッカールームに戻ったらトムが『もっとできるよ』と。みんな満足せずに高い目標を持っています。トムが高い期待を私たちにしてくれている、それをプレーで返したいです」

そのトム・ホーバスと一緒にバスケをするのはこのファイナルが最後となる。女子日本代表ヘッドコーチ就任が決まったことで、JX-ENEOSを率いるのは今季限りとなったからだ。この監督人事が決まってから、吉田は「トムのバスケットに追い付き、追い越したい」という目標を見いだした。

「トムのためにも優勝したい。ファイナルの舞台でトムのバスケットをしたい。私たちに教えてくれたことをコートで表現することが、トムに対する恩返しだと思っています。そういう意味ではすごく熱くなっています」と吉田は言う。

「ホントに一番は『トムのために』ですね」。今日から始まるファイナルでは、トム・ホーバスと一緒に作り上げたバスケットの集大成が見られるだろう。モチベーションを見いだした吉田は、強い。