文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

得点力の秘訣は「自分が決める」という気持ちの強さ

現在、Bリーグが実施している『Bリーグバレンタイン』。要するにバレンタインに合わせたイケメン投票なのだが、14日朝の時点で2700を超える票を集めてトップを走っているのが富山グラウジーズの宇都直輝だ。その宇都がどんな選手なのか、あらためて紹介したい。

1991年6月11日生まれの25歳。中部大学第一から専修大学へと進み、アーリーエントリーで2013-14シーズン途中にトヨタ東京(現アルバルク東京)に加入した。そして今シーズンから富山でプレーしている。

大学時代から快足で知られたスコアラーで、大学時代は1年から3年連続で関東大学リーグの得点王に輝いている。低い体勢を保ったままトップスピードでインサイドに突っ込み、そのまま伸びのあるレイアップを決めるのが、当時から現在に至るまで宇都が得意とする得点パターンだ。

スピードはもちろん、激しい当たりにも崩れない足腰の強さ、そして何より「自分が決める」という気持ちの強さが持ち味。攻撃を組み立て、試合をコントロールする能力ではBリーグの他のポイントガードに譲るが、身長190cmと大型で、さらには得点力を備えたポイントガードとなると、日本では貴重な存在だ。何より、宇都のガッツ溢れるプレーには『小さくまとまらない魅力』がある。

『小さくまとまらない』と言えば負けん気の強さも有名。大学時代の練習試合ではプロ選手に臆するどころか喧嘩腰でマッチアップし、まるでプレーオフのような鬼気迫るプレーを見せるなど、コート外での柔和な顔つきからは想像もつかない『鬼の形相』も見せていた。

『Bリーグ仕様』のスタイル転換で宇都を欲した富山

大学で華々しい実績を残した宇都だが、粗削りなだけにここまでのキャリアで苦労も強いられてきた。2シーズン半在籍したトヨタ東京では分厚い選手層に阻まれ、満足なプレータイムを得られず。シーズンを重ねるごとにスタッツは伸びたものの、1試合平均15分ほどの出場時間の中で戦術に縛られ、自分らしいプレーを見せられずにいた。

そして昨夏、Bリーグ開幕を前に宇都は富山への移籍を決める。旧bjリーグの強豪は、ハーフコートオフェンス主体のバスケットから素早いトランジションを軸とした攻撃的なチームスタイルへ、『Bリーグ仕様』のスタイル転換に踏み切った。そこで必要とされたのがスピードと得点力を兼ね備えた宇都だ。ヘッドコーチのボブ・ナッシュは、不動のポイントガードだった城宝匡史のポジションを変えてまで宇都を迎え入れた。

良くも悪くも富山は『個』が主体のチーム。『組織』の縛りがキツいトヨタ東京とは対照的に、個人能力を存分に生かすバスケットを志向している。このスタイルに宇都のプレーはハマった。オールラウンダーの面もある宇都は開幕当初こそシックスマンとして起用されたものの、開幕から1カ月もすると先発に固定され、今では不動のポイントガードとなっている。

城宝も宇都と同じく負けん気が強いスコアリングガードだが、若い宇都をすぐに認めてポジション変更を受け入れた。「宇都はアシストも結構できます。僕と岡田(優)がウイングで、シュートを狙えば相手は嫌だと思います」と城宝は言う。

自分から積極的に仕掛けるプレーで得点とアシストを量産

宇都はここまで36試合すべてに出場、1試合平均28.6分のプレータイムを得て、8.6得点、3.9アシストを記録している。周囲を使うことより自らアタックすることを優先し、そこから状況に応じて即興でボールをさばく宇都のプレーがチームにフィットするには時間を要した。それでもシーズン中盤から得点もアシストも伸びており、まだまだ数字は上げられるはず。そしてチームをもっと勝たせることもできるはずだ。

1月のオールスターゲームには選ばれた宇都だが、昨年12月に発表された日本代表の重点強化選手68名からは漏れている。1991年6月生まれの宇都は29歳で東京オリンピックを迎える。同学年に田中大貴、張本天傑(宇都とは高校の同級生)、永吉佑也がいる宇都の代は、2020年で最も期待される年代。サイズのあるスコアリングガードとして、宇都には代表での活躍にも期待したい。

中地区最下位と苦戦が続く富山だが、宇都は「爆発力はどこよりもある」とチームを評す。その爆発力は、自分の得点力による部分も大きいのだろう。どんな相手にも全力で食らい付いていく宇都のプレースタイルは、バレンタイン企画で票を集める『王子様』な雰囲気とは程遠いかもしれないが、それはそれで魅力的。この企画を機に、宇都というプレーヤーに大いに惚れてもらいたい。

Bリーグのバレンタイン企画、投票は2月15日の10時まで。