モーゼス・ムーディー

15点ビハインドで第4クォーターへ「ステフならここで何を言うか知っている」

ウォリアーズは前日にヒューストンでロケッツと戦い、そのままサンアントニオに移動してスパーズと対戦した。ベテランの多いチームがシーズンを通してコンディションを保つには、アウェー2連戦では主力を休ませるのもやむを得ない。ステフィン・カリーを始め、主力がごっそり不在となった。

長いシーズンを戦う上では『捨てゲーム』も必要なのかもしれない。スティーブ・カーはこの起用法を正当化すべく、「純粋にケガの問題なんだ」と釈明した。ステフは左足の爪先を痛めており、アンドリュー・ウィギンズは左膝を痛めている。ネマニャ・ビエリツァは腰痛を抱え、アンドレ・イグダーラは臀部をケガしていた。オットー・ポーターJr.は左足にケガを抱えており、クレイ・トンプソンは大ケガから復帰したばかりで、2日連続でプレーさせる予定はない。実質的に『捨てゲーム』だったのは明らかだ。

しかし、勝てなくても仕方のない試合であっても、勝ちたくないわけではない。ウォリアーズの若手たちがこの試合では奮起した。ジョーダン・プールが31得点を挙げ、ケボン・ルーニーは12得点12リバウンドのダブル・ダブルを記録。ゲイリー・ペイトン2世が試合途中にケガをして8人ローテとなる中で、ベストメンバーのスパーズと互角の攻防を演じ、最後には競り勝った。

プールはスプラッシュ・ブラザーズに代わってエースの役割を果たしたが、同じぐらい注目を集めたのはモーゼス・ムーディーだ。昨年のNBAドラフトで14位指名を受けてウォリアーズに加入したが、7位指名のジョナサン・クミンガが早々にローテーションに定着する一方で、彼はなかなかチャンスを得られなかった。プールにデイミオン・リー、ペイトン2世と控えガードの層が厚い上にクレイまで復帰したのだから、ムーディーにとっては厳しい。現地1月29日にはサンタクルス・ウォリアーズの一員として、Gリーグのオースティン・スパーズ戦に出場している。Gリーグでは平均27.4得点と大活躍しているが、ウォリアーズでプレータイムを得るのはそう簡単ではない。

ところが現地1月31日のロケッツ戦で、カーはムーディーを初めて先発に据えた。カリーとトンプソンと並んでの3ガード起用に応えた彼は、出場25分で11得点を記録。それで自信を付けたムーディーは、スパーズ戦でも先発出場。結果は37分プレーして6本の3ポイントシュート成功を含む20得点と、出場時間も得点もキャリアハイを大幅に上回った。

スタッツに残らない大仕事もあった。プールの決勝3ポイントシュートはムーディーがデジャンテ・マレーの懐にダイブしてルーズボールを拾い、パスを繋いで作り出したチャンスだ。技術だけでなく折れない闘争心も彼はコート上で見せた。

「僕はチャンスを辛抱強く待っていた。絶対にチャンスは来ると信じて、その時に自分が輝けるように準備してきた。今日は準備とチャンスが重なったから活躍できたんだ」とムーディーは言う。

そして、このチームに身を置くことが自分にとってどれだけプラスなのかを彼は語る。「勝利を積み重ねることでしか分からない、勝つための方法を熟知する選手たちがこのチームにはいる。練習場でも試合でも彼らと会話して、勝つためには何をすればいいのかを注意深く観察するようにしている」

この試合では第4クォーター開始時点で15点ビハインドからの逆転劇だった。それを可能にしたのも、自分のような経験をこのチームの選手は誰もがしているからだとムーディーは言う。「第4クォーターが始まる時にハドルを組むよね。ここでステフだったら何を言うか、何度も見てきたから僕らは知っている。僕らもやれる自信があった。だからこそ勝てたんだ」

ムーディーは我慢の時期を経て、この2日間で持てる実力を爆発させた。ここで自信を得たことで、彼もまたウォリアーズを支える重要な戦力となるだろう。スプラッシュ・ブラザーズを擁し、それに続くプールという主力が台頭し、その後にはムーディーのような若手が続く。チームの充実ぶりを示す勝利に、スティーブ・カーは大興奮でこう語った。「今日は欠場したベテランたちも興奮しているだろうね。ファンタスティックな勝利だった」