1年前の悪夢を振り切った渡嘉敷来夢がENEOSを皇后杯優勝に導く「選手としてだけでなく人としても成長できて最強になった」

1年前の悪夢を振り切った渡嘉敷来夢がENEOSを皇后杯優勝に導く「選手としてだけでなく人としても成長できて最強になった」

2021/12/19 21:00
渡嘉敷来夢

去年の皇后杯で大ケガ「やっとここでその思いが吹っ切れました」

第88回皇后杯の決勝が行われ、ENEOSサンフワラーズがデンソーアイリスに86-62で快勝し、9年連続26回目の優勝を飾った。この試合、ENEOSは第1クォーターこそ互角の展開で終えるが、第2クォーターに持ち味のリバウンドから走る展開に持ち込むことで、イージーシュートのチャンスを作り出す。MVPを受賞した林咲希が得意の3ポイントシュートを高確率で決め、エースの渡嘉敷来夢がインサイドで確実に得点を重ねる。終盤には岡本彩也花も長距離砲を沈め、中心選手がきっちりと仕事をこなした。

その結果、このクォーターで29-16と大きく突き放して主導権を握ると、後半に入ってもデンソーの強力インサイド相手にリバウンドをしっかりと取り、守備の強度を落とさないことで付け入る隙を全く与えず。盤石の試合運びで楽々と逃げ切った。

ENEOSの大黒柱、渡嘉敷はこの大一番で19得点18リバウンド7アシストを記録。さらにデンソーのエースである髙田真希を9得点に抑えるのに大きく貢献と、まさに試合を支配する圧倒的なパフォーマンスで9連覇の立役者となった。

渡嘉敷は1年前の皇后杯ベスト8で右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負い、それが原因で東京オリンピックの欠場も余儀なくされた。もちろん去年の決勝は、ベンチに座ってチームメートに声援を送ることしかできなかった。

だからこそ「どんな展開でもしっかりと我慢して、自分たちのバスケットを40分間できたのが勝因だと思います」と振り返ると、こう続けた。「本当に今日、勝てて良かったと思います。去年、優勝はしましたが、私自身は悔しい思いが残っていました。やっとここでその思いが吹っ切れました」

渡嘉敷来夢

梅澤と高田に「たくましい姿を見られたのでホッとしています」

そして、今回の皇后杯に並々ならぬ決意で臨んでいたと続ける。「東京オリンピックの代表に残れなかった時は一番、心が折れそうになりました。その時はめちゃくちゃしんどくて、岡本(彩也花)、ヘッドコーチの(佐藤)清美さんに電話しました。そこで2人が無理する必要はないと言ってくれて、自分は絶対に皇后杯を取りにいくと決めました」

自身が再びコートに立つ姿を見たいという多くの声、さまざまな人々の支えとともに自分が出場できなかったオリンピックで女子代表の仲間たちが銀メダルの快挙を達成したことも完全復活への大きなモチベーションになった。

「東京オリンピックでみんなが結果を出した姿を見て、絶対にこの人たちに負けたくないと思いました。そのおかげでどんなにしんどいことも乗り越えられましたし、この1年、選手としてだけでなく人としても成長できて最強になったと思います」

辛く厳しいリハビリを乗り越える助けとなったのが、同じように大ケガを負って昨年の皇后杯決勝をサイドラインで見つめるしかなかった司令塔の高田静、センターの梅沢カディシャ樹奈の存在だった。「彼女たちの頑張りを見て、自分も頑張らないといけないと思えました。ケガをしたのが1人ではなかったので、2人には支えられました」

こう感謝する渡嘉敷は、だからこそ決勝で高田がドライブでデンソーのディフェンスを切り崩し11得点、梅沢は13得点19リバウンドとゴール下で大暴れし、揃って勝利に大きく貢献したことに対して、込み上げる感情を抑えられなかった。会見で2人について聞かれると「泣きそうです」と目を赤くする。「梅澤と高田は一緒に頑張ってきたので他のみんなよりも思うところはあります。この試合でたくましい姿を見られたのでホッとしていますし、負けてられないです」

渡嘉敷来夢

次はWリーグ王座奪還へ「一試合一試合、成長していくチームです」

今回の優勝は大きな喜びをもたらすものだが、女王ENEOSにとっては皇后杯、リーグ戦の2冠達成が毎シーズン至上命題となる。昨シーズン12連覇を逃したリーグ戦のタイトル奪還を果たしてこそ、満足できるシーズンとなる。

「リーグが開幕してから苦しいゲーム展開が多かったですが、その中でも勝ち切るところは勝ちきれていました。シーズンが始まる前から言っていますが、一試合一試合、自分たちは成長していくチームです。皇后杯でもちょっと成長した姿を見れました。現状に満足することなくリーグ戦に向けてやっていきたいです。一人ひとりがもっと良いプレーができると思います」

このように渡嘉敷は、今後のリーグ戦に向けて意気込みを語り、チームはさらに成長できる余地がたくさんあると続ける。そして、何よりも自身がもっとステップアップできると言い切る。

「ケガをしてから1年しか経っていないので、もっとコンディションも上がります。今の自分に満足していないので、しっかりとリーグ戦に向けてまたやっていきたいです」

他のチームにとっては胃が痛くなる、そしてENEOSのファンにとってはこれ以上ない頼もしい台詞が間違いないことは今週のプレーが証明している。今回の皇后杯優勝は渡嘉敷にとって一つの区切りになったはず。ただ、それは故障からの復活ロードの終着点ではなく、心身ともにレベルアップし、さらなる進化を遂げる新しい道のりのスタート地点である。

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