ステフィン・カリー

『バスケットボールの殿堂』で、開始たった4分半で記録達成

レイ・アレンは「私には見届ける義務がある」と言った。レジー・ミラーも同じ気持ちだろう。現地12月14日、マディソン・スクエア・ガーデンでのニックスvsウォリアーズは、ステフィン・カリーのための試合となった。

カリーは前日のペイサーズ戦で5本の3ポイントシュートを決め、NBAでの通算成功数を2972本とした。レイ・アレンが持つ歴代通算1位まであと1本。ニックス戦で注目されたのは、彼がこの数字に並び、追い抜くかどうかではない。トム・シボドーがどんな対策を講じようが、『バスケットボールの殿堂』でカリーが大記録を達成するのはほぼ確実だった。並のシューターであれば決められない日もある。だが、カリーの非凡な才能は、これまで誰もが、何度も目にしてきた。

この大記録達成を前に、『ESPN』はカリーの専属トレーナーであるブランドン・ペインに取材している。カリーが彼と出会ったのは、NBA2年目を終えた2011年の夏、足首のケガを繰り返して最初の手術に踏み切った後のことだ。リハビリをしている間、足首に負荷をかけず、座ったままでできるハンドリングのドリルを紹介した。ペインは当時を振り返り、「リハビリなしでプレーしていたのが思い出せない」とカリーが語っていたのを覚えていると言う。

そこから2人はタッグを組み、10年間でNBAを変えた。ペインの下で磨きを掛けたのはハンドリングで、味方のアシストパスを待って決めるシューターから、自らシュートチャンスを作り出す技術を2人で編み出してきた。「参考にしたのはスティーブ・ナッシュの多彩なフィニッシュだ。我々はそのコンセプトをペリメーターでできるようにした」とペインは言う。

「ディフェンスは対策してくる。でも、どこかを塞げば、別のどこかが空く。決まった動きをなぞるんじゃなく、相手の反応によって攻めるんだ。ディフェンスの動きを読み、シュートを打つためのスペースを作るために動く。その動きをしても、常に打つためのバランスが取れていなければいけない」

実際、新記録達成に時間はかからなかった。ニックス戦の開始1分でカリーは最初の3ポイントシュートを決める。ドレイモンド・グリーンのスクリーンを使い、相手ディフェンスが次の動きを見極めようとした一瞬の間を逃さずにジャンプシュートを放った。そして開始4分半、味方にボールを預けて一度ペイントエリアに入り、下がりながらパスを要求して、クイックリリースでシュートを放つ。動きながらのシュートではあったが体勢は崩れておらず、アレク・バークスのシュートチェックを気にせずねじ込んだ。

これで2974本の新記録達成。ボールがリングに吸い込まれるのを見届けると、カリーはキスを贈り、自分の胸を力強く叩いた。ここで試合はしばらく止まり、カリーはチームメートの祝福を受け、コートサイドで見守る父のデル・カリーと、そしてドレイモンド・グリーンと、レイ・アレンと抱擁を交わした。会場中からの拍手に、カリーも拍手で応えた。