ドウェイン・ウェイド

写真=Getty Images

「最後のダンスに付き合ってもらいたい」

この夏にフリーエージェントとなり、去就が注目されていたドウェイン・ウェイドが、2018-19シーズンを最後に現役を引退することを表明した。

ウェイドは、『One Last Dance』というタイトルの動画をYouTubeに投稿。スタジオに用意されたカメラの前に一人で立ち、「多くのアスリートにとって好まざる時期となる夏になった。大好きで、5歳から31年もやってきた競技を続けるのか、それとも立ち去るべきかを決める時期になった。何か別のことを始め、次の世代の選手に道を譲るべきかを考えて、決める時期になった」と語り始めたウェイドは、時折言葉に詰まりながら、次のように話し続けた。

「あらゆることを考えた。『肉体的にできるのか?』、『毎朝起きて、まだやれるだけの状態に身体があるのか?』、『長距離の遠征に耐えられるのか?』、『家族と離れて暮らす現役を続けることは自分勝手なんじゃないか?』、『息子の試合を観に行けなくていいのか?』、『家族が必要とする時に一緒にいられなくていいのか?』、『妻をサポートできなくていいのか?』。そこまで大したことのように思われないかもしれないけれど、自分にとっては大切なこと。それに、この何年か、家族は僕の考えを優先してくれた。でも、決断をする時には、自分を支えてくれた人、自分のキャリアを支え、支持してくれた人のことを考えるべきだ。僕の家族は、自分を支えてくれている。皆は自分を、NBA優勝3回、オールスター選出12回、オリンピック金メダリストとして見てくれているかもしれない。でも、シカゴ出身の少年で、周りよりも小柄で、シュートが下手で、身体能力も高くなくて、イリノイ州のロビンス出身の自分が、そんな選手になれるなんて思いもしなかった」

「幼い頃から、いつだって自分より大きな存在の一部になりたかった。自分にとっては、それがバスケットボールだったんだ。何点決めようが、何度スターティングラインナップに自分の名前が載ろうが、バスケットボールは常に大きな存在なんだ」と語ったウェイドは、ファンに感謝の気持ちを伝えると、今年の1月に他界した元代理人のヘンリー・トーマスについて話し始め、涙を拭いながら「僕たち選手は、子供のころから、誰かを誇らしくさせたくてプレーしている。両親、兄弟に自分のことを誇らしく思って欲しくてプレーしていた。ハンク(トーマスの愛称)が自分の人生にかかわるようになってからは、彼を誇らしい気持ちにさせたくてやってきた。その彼が亡くなって、それで終わりだと思った。その後で(キャバリアーズから)ヒートにトレードされたことで助けられたけれど、十分ではなかった。今回の決断は、バスケットボールよりも大きなことだった。たしかに、昔ほど早く動けないし、高くも跳べない。できないことがたくさんあるけれど、球団、チーム、適切な人間、指導者と一緒なら、まだやれることがある。僕たちが日々どういうことを経験しているか、周りは知らない。今回の決断は、これまでで一番ハードなものだった。でも、これまでのキャリア、今こうして自分の決断を伝えられるポジションにいられることを思うと、笑顔になれる。自分自身にあらゆることを問いかけてきた。家族、世界中のファンの皆の意見も聞いた。僕は、これまでも自分にとって、家族にとって正しいと思うことをして、今に至っている。そして今、自分にとって適切と思っていることは、こうだ。皆にあと1年だけ付き合ってもらいたい。僕にとって最後のダンスに付き合ってもらいたい。あと1シーズンで終わりにする。あと1年だけ、持っている力を出し切る。辞めても、僕はバスケットボールを愛し続ける。でも、最後のシーズンを楽しもう。若い選手が多いチームに試練を乗り越えさせよう。キャリアという物語の終わりを皆で一緒に記そう。もうすぐ16年目のシーズンが始まる。もうすぐだ」

近日中にヒートとの再契約を締結するウェイドが、最後のシーズンに臨む。