ゴンザガ兄弟

文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、FIBA.com

アイラと八村の共通項は「ゴンザガ」と「富山」

バスケットボール男子日本代表は、ワールドカップアジア2次予選の初戦となるカザフスタン戦に85-70で快勝した。この試合、八村塁は30分以上の出場で24得点7リバウンドをマーク。さらにアイラ・ブラウンも約18分の出場で9得点8リバウンドを記録し、両者ともに豪快なダンクでもチームに勢いを与えた。

勝利に大きく貢献した2人の共通項はアメリカ西海岸の強豪ゴンザガ大学。アイラはその出身であり、八村は在学中だが、つながりはそれだけではない。そのキーワードは『富山』だ。

八村は中学校まで富山で生活していたが、その頃にアイラは富山グラウジーズでプレーしていた。そういった縁があり、八村が「父とアイラは友人で、バッシュをもらったこともあります」と言う、昔からの付き合いだ。

そんな2人が今、日本代表で一緒にプレーしている。アイラは八村を『スペシャル・キッド』と呼び、「一緒にプレーするのは楽しい。素晴らしい身体能力の持ち主で、あらゆる方法で得点できる。そして僕がリバウンドを取りに行く。お互いに良い関係でプレーできているね」と素直に喜びを語る。

八村にとっても、アイラと一緒にプレーできることは感慨深い。「アイラは僕にとっても特別な存在です。僕がバスケットボールを始める前からの付き合いで、彼のファンだったし、今一緒にプレーして、同じ大学に行っているのは普通ではないことです」

ゴンザガ兄弟

アイラ「塁はNBAドラフトで指名される選手になる」

アイラは八村の将来性について「最初に会った時は子供だったけど、今は日本で一番のスターだ。日本人で最初にNBAドラフトで指名される選手になると思っている。ハードなトレーニングをして、どんどん成長している。このまま進歩を続ければ、カワイ・レナードのようなタイプの選手になると思う」と太鼓判を押す。

カザフスタン戦が終了した後の記者会見で、八村は現地メディアから「NBAで注目している選手は」との問いに「レナードと(ヤニス)アテドクンポ」と答えていたが、それをアイラは知らなかった上で、レナードの名前を出している。八村はレナードを挙げた理由を「周りの人たちから僕はカワイに身体つきが似ていると言われるので」と明かす。

2人とともに日本代表を牽引するのが、ワールドカップ予選で初登場となった渡邊雄太だ。「よりサイズがあることで、リバウンドが取れるようになりました。オフェンスでもより得点力が増します」と、八村は渡邊加入の効果を語る。また、八村とも渡邊とも初めて一緒にプレーしたアイラは、その感想をこう語る。「彼らは素晴らしいスコアラーでありディフェンダーだ。これまで僕がプレーしていた代表になかったものをもたらしてくれている。2人が入ったことで、自分が主導となって点を取りに行く必要はなくなった。すべての局面で力を振り絞ることなく、ディフェンスとリバウンドに集中できるようになった」

ゴンザガ兄弟

八村「自分たちのやるべきことをやるだけ」

Window3で代表から外れたアイラだが、代表への愛着も責任感も損なわれてはいない。「ニック(ファジーカス)の故障があったので自分がまた選ばれたことは理解しているし、そういった背景があっても僕のモチベーションに影響は全くない。これまでと同じように自分の持てる全力を出して日本のためにプレーする」と語っている。

明日はいよいよイランでのホームゲームが行われる。これまでの実績では明らかにイランが格上だが、ワールドカップ出場のためにはしっかり勝たなければいけない。「イランに勝つにはよりもハードにプレーし、カザフスタン戦のようなターンオーバーはなくすこと。すべてのプレーに集中しないと。これまでと同じように、自分たちのやるべきことをやるだけで、それができれば結果は自然とついてきます」と八村が意気込みを語れば、アイラもこう続ける。

「チームメートを信頼して、エナジーを出してプレーし、リバウンドをしっかり取る。僕が代表デビューしてからイラン相手に結果が出ていないけど、今の僕たちは彼らにとっても厳しい相手になっているはずだ。ディフェンスからどんどん走れる展開にしていきたい」

イランはカザフスタン以上にサイズ、フィジカルで強力なチームだが、スピードでは日本の方に分がある。アイラが語るようにリバウンドで五分に渡り合い、アップテンポな展開に持ち込むことができれば勝機は見いだせるはずだ。