「ホームのチームを応援することと一線を越えてしまうのは別だ」
現地11月24日のペイサーズvsレイカーズは、延長にもつれた末にレイカーズが124-116で競り勝った。アンソニー・デイビスが体調不良で欠場したが、レブロン・ジェームズが出場停止が明けてチームに戻り、まだまだ連携は十分でないもののチームにあるべきエネルギーは戻ったようだ。
レブロンはオーバータイムも含めて43分半もプレーし、39得点でチームを牽引。「昨日プレーしなかった分までエネルギーを出して、チームメートを助けられて良かった」と勝利を喜んだ。
ただ、この試合のオーバータイムには『事件』が起きている。延長の残り3分にレブロンがドマンタス・サボニスの手前から勝ち越しの3ポイントシュートを沈め、続くディフェンスではドライブするマイルズ・ターナーのボールを奪い取ることに成功。その次にプレーが止まった瞬間、レブロンは審判を呼び止めてコートサイドへと導いた。彼が指さすのはペイサーズファンの男女。レブロンの要請を受け、アリーナの係員はこの2人を退席させた。
2人はどうやら使ってはいけない言葉をレブロンに投げ掛けたようだ。試合後のレブロンは「卑猥なゼスチャーや言葉は許されない。ホームのチームを応援することと一線を越えてしまうのは別だ。言ってはいけない言葉がある」と説明している。コート外に連れ出される2人に悪びれた様子はなかったが、自分たちに過失があったことは素直に認めたようだ。ただ、どんな発言があったかはレブロンは明らかにしなかった。
悪い行為は往々にして波及効果で広がっていくもので、SNS時代の今はその傾向がより強くなっている。今シーズン開幕から1カ月、ここまではファンが大きな問題を起こすことはなかった。今回のケースは大きな事件ではないが、ここで食い止めるのが肝心だ。
昨シーズンのプレーオフでは、ファンの行儀の良くない行為がアリーナからアリーナへと広がった。ウェストブルックの頭上からポップコーンを降り注いだ者、カイリー・アービングにペットボトルを投げた者、トレイ・ヤングに唾を吐きかけた者、ジャ・モラントの両親を侮辱した者、ウィザーズの試合ではコートへの闖入者も現れた。
新型コロナウイルスのパンデミックが明けてファンが試合会場に戻って来た時、そのストレスは正しくない形で発散された。トレイ・ヤングは持ち前のハートの強さがあり、ブーイングが降り注ぐ中でいつも以上のパフォーマンスを披露したが、それはNBAのあるべきエンタテインメントからは逸脱している。
カイリーが彼を『敵』と見なすセルティックスのファンから水の入ったペットボトルを投げつけられた時、チームメートのケビン・デュラントはたまらずこう発言した。「ファンには成長してほしい。1年半も家に閉じこもってストレスだったのは分かるけど、僕らがサーカスの動物じゃないことぐらい分かってほしい。自分の感情に振り回されずゲームを楽しんでほしい」
当時ウィザーズに所属していたウェストブルックは、ファンにポップコーンを投げつけられて怒り狂ったが、その後にファンからの挑発は日常茶飯事で、「見て見ぬふりをすることを覚えた」と語っている。今回、ウェストブルックは2人のペイサーズファンが退席させられる様子を間近で見守っていた。彼は試合後、「何を言ったかは聞こえなかった」とコメントしているが、それも彼の「見て見ぬふり」なのかもしれない。
選手とファンとの衝突は面白おかしく拡散され、エンタテインメントの一つとして消化される傾向にある。しかし、たとえ因縁のある『敵』であっても、選手とファンとの間にはリスペクトがあるべきだ。今回のレブロンとインディアナのファンとの騒動が大きく発展することなく、単発で終わることを願いたい。