ルーク・エヴァンス

機動力とハードワークを遂行し続けるスタミナ、献身性を兼ね備えた選手

トム・ホーバス新体制になって初の公式戦となるワールドカップ予選Window1のバスケットボール男子日本代表候補には、これまでフル代表に縁のなかった多くの新顔が招集されていて、B2ファイティングイーグルス名古屋に所属する帰化枠のルーク・エヴァンスもその一人だ。

ここ数年、帰化枠と言えば日本を2019年ワールドカップ出場に導いたニック・ファジーカスにアイラ・ブラウン、そして東京オリンピック代表枠を争ったギャビン・エドワーズ 、ライアン・ロシターなどが名を連ねていた。彼ら4人に共通しているのは、B1の各チームでそれぞれ中心選手として活躍していること。一方、エヴァンスといえば、今シーズンが日本8年目だが、これまでB1経験は昨シーズンの島根スサノオマジックでの4試合のみ。これはコロナ禍による入国規制で合流が遅れた外国籍選手に対する追加契約ルールという救済措置でプレーしたものだ。

NCAA2部(現在は1部のウェスタンアスレチック・カンファレンス)のカリフォルニア・バプティスト大学出身のエバンスは、プロ最初の1年をコロンビアで過ごすと2014-15シーズンに当時NBLの下部リーグNBDLのレノヴァ鹿児島(現鹿児島レブナイズ)に入団。翌シーズンも鹿児島に在籍し、Bリーグ誕生後は東京エクセレンスと金沢武士団(当時はB2)、アースフレンズ東京ZとB2を舞台にプレーしていた。だが、ここ3シーズンは、B3の大塚商会越谷アルファーズ、豊田合成スコーピオンズ、ベルテックス静岡と、Bリーグ誕生後に外国籍のレベルが上がる中でカテゴリーを落としていた。

そのエヴァンスにとって、大きな転機となったのが今年の2月に帰化申請が受理されたことだ。今シーズンからB2のFE名古屋に加入し、ここまでチームのB2最高勝率のスタートダッシュに貢献している。 今シーズン、FE名古屋の外国籍は211cmのブライアン・クウェリ以外は、日本で9シーズン目となるアンドリュー・ランダル、ゴンザガ大学では八村塁と一緒にプレーしていたジェレミー・ジョーンズの3人体制となっている。198cmのランダル、201cmのジョーンズは機動力に長けた3番もこなせるタイプだが、それぞれが持ち味を発揮できているのはエヴァンスが彼らと一緒にプレーしインサイドで身体を張ったり、スクリーン役を的確にこなすなど泥臭い仕事を遂行している部分も大きい。また、速攻にも参加してフィッシュにどんどん絡める走力も備えている。

ルーク・エヴァンス

「コーチが求めている速いトランジションなどはできていると思います」

今回の招集についてエヴァンスは語る。「代表候補選手に選ばれてとてもうれしいですし、光栄に思っています。エネルギー高くチームが勝つために貢献していきたいです」

エヴァンスは、オフシーズンの夏の間には3×3にも積極的に参加し、2018年にはTACHIKAWA DICEで3×3全日本選手権で優勝して、MVPを受賞している。このように深くかかわってきた日本への愛着をこう語った。「今年が日本で8年目のシーズンで、今まで長い旅でした。23歳、24歳の頃に来日して今では日本をホームに感じています。3×3なども経験し、自分ができることをやってきて代表の機会をもらえるのはうれしいです。今後も、自分にできることをやっていきたいと思っています」

ホーバスは「背は少し小さいけど3ポイントシュートもあるし、本当に真面目な選手です」とエヴァンスを評する。そして本人は、自身の求められているものを次のようにとらえている。「中国戦に出場できるチャンスがあれば、高いエナジーを出してプレーしたいです。コーチが求める走るバスケットボールと3ポイントシュートをどんどん打つことは、自分のスタイルで強みでもあります。そこを出していきたいなと思います」

冒頭で触れたこれまでの帰化選手に比べたら、エヴァンスは個人技で打開して点を取ることは期待できないかもしれない。しかし、合わせのプレーからゴール下で得点する決定力は持っている。そして、ホーバスの志向する速いペースに対応できる機動力と、ハードワークを遂行し続けるスタミナと献身性を備えている。

実績が劣るのは否めないが、ホーバスの目指すスタイルとの相性を考えるとB1に所属する帰化選手たちとも代表争いで対抗できるポテンシャルをエヴァンスは持っている。本人も「コーチが求めている速いトランジションなどはできていると思います」と手応えはある。そして今回、それを証明できる絶好の機会を得た。

また、忘れてはならないのが、B1と違いB2は代表活動中もリーグ戦を行っている。激しい上位争いが繰り広げられている中、FE名古屋は主力のエヴァンスを代表に送り出してくれた。このチームの心意気に応えるためには、中国との2試合へ強い想いを持って臨むだろう。