トム・ホーバス

「速いし、シュート力もある。その力を上手に使いたい」

新たなヘッドコーチにトム・ホーバスを迎えたバスケットボール日本代表は、今月末に開催されるワールドカップ予選のWindow1、中国との2試合に向けた強化合宿をスタートさせた。強化合宿は始まったばかりだが、今日の会見でホーバスはその内容を高く評価している。

「選手たちはすごく良いエネルギーを出してくれています。これまで4回練習しましたが、エネルギーは全然落ちていないです。全員が一生懸命頑張っている。すごく良い合宿の出だしで、競争は激しいです」

目指すチーム像は、今夏の東京オリンピックで銀メダルを獲得し、世界の注目を集めた3ポイントシュートを重視する女子代表でやったのと同じ『スモールバスケットボール』だ。

「プレースタイルは女子と一緒です。あのバスケットは男子にもピッタリだと思います。1番(ポイントガード)、2番(シューティングガード)、3番(スモールフォワード)の選手は速いし、シュート力もある。その力を上手に使いたい」

指揮官は、前任のフリオ・ラマスと違い全体的なサイズアップに重きを置いていない。「私はサイズアップより、速いペースを作りたい。オリンピック前から(田中)大貴が1番になって、そこはサイズアップしました。ただ、今の2番、3番の選手はそんなに小さくないと思います。ポイントガードのサイズアップよりも、今の富樫(勇樹)、齋藤(拓実)、寺嶋(良)、藤井(祐眞)、ベンドラメ(礼生)の技術とか速さ、プレーメーク、ゲームメークの力を生かす方が(サイズアップをしなかった)マイナスよりプラスだと絶対に思います」

トム・ホーバス

中国戦に向け「フルコートの速いペースを作ったらウチの力を見せられる

だからこそホーバスは田中大貴についてもメンバーに招集したい考えだったが、その場合は1番ではなく、2番起用の考えだった。ただ、彼は東京オリンピックを最後に代表引退を決めている。ホーバスは、アルバルク東京と千葉ジェッツの試合後に田中と話したことを明かす。

「私は『是非来てください。気持ちがあれば。あなたのバスケが好きだから』と言いました。でも彼はもう今の気持ちに変わりないと言いました。そこを分かっていたから、あの時はもう、「もし2月の試合でやりたいなら待っているよ」と伝えました。でも、このシステムであなたは2番と言いました」

またホーバスは、田中だけでなく少なくない東京オリンピック出場メンバーがメンタル面で疲労していて、それが今回の招集メンバーにも影響を与えたと示唆しており、特に帰化選手がB2のファイティングイーグルス名古屋のルーク・エバンスのみとなった背景をこう明かす。

「帰化選手もギャビン(エドワーズ)、ニック(ファジーカス)、(ライアン)ロシターといろいろ話しました。ギャビンも五輪が終わってから気持ちがちょっと足りない。ロシターも五輪に出られなかったことで今は代表へのモチベーションが足りないみたいです。ニックは36歳で足が痛いから今回は休憩したい。帰化選手はそもそも少ない中、今はエバンスが頑張っています。背は少し小さいけど3ポイントもあるし本当に真面目な選手です」

ホーバス体制初戦の相手、中国は210cmを超えるビッグマンを複数揃えており、サイズでは明らかに劣っている。「ハーフコートゲームになったらそれは中国のゲーム。フルコートの速いペースを作ったらウチの力を見せられると思う」と目指す展開を語る。

11月27日、『アジアの盟主』である中国相手にどんなバスケを見せてくれるのか、より期待が高まる指揮官の明確な言葉だった。