福岡県は福岡大学附属大濠と福岡第一が高いレベルでしのぎを削る男子の印象が強いが、女子も有力校がひしめく激戦区だ。優勝の常連である桜花学園や岐阜女子は、県では敵がいない状態。一方で福岡はウインターカップの出場権を勝ち取るまでが一苦労だ。今回の県予選を勝ち抜いたのは、福岡大学附属若葉だ。インターハイでは桜花学園に大敗を喫したが、そこから新型コロナウイルスの影響で練習がままならない時期がありながらも、チームは大きく成長した。「選手とともにガッツポーズができる試合をしたい」と語る池田憲二コーチと、若葉の選手たちの戦いに注目したい。
大敗したインターハイからレベルアップ「全然違う形でチャレンジできる」
──今回、福岡県予選を勝ち抜くまでの道のりはどんなものでしたか?
この夏、彼女たちは本当にチーム一つになって頑張りました。エースの加藤愛香にケガがあったりと苦しい道のりでしたが、キャプテンの中嶋そらがチームをまとめて勝ち抜くことができました。インターハイでは桜花学園に惨敗して、そこからどうやり直すかというところで、8月と9月はコロナで練習ができない状況でした。
サイズが大きいチームではないので守って走る、ブレイクアーリーで思い切りの良いシュートを決めていくプランはインターハイ前から同じなのですが、今回の県決勝が一番良い出来でした。相手の留学生プレーヤーをセンターの柿元(舞音)と加藤を中心に守って、そこから走ってシュートをよく決めてくれました。
思い切り良くやれたのは、今回は福岡でウインターカップ出場権が2つあって、決勝戦は選手たちがかなりリラックスしてプレーできたからだと思います。また応援の力もありました。先生たちも事務員もほぼ全員来て、一般の生徒もかなりの人数が応援に来てくれました。実は会場に入れなくて外で泣いている子が20人か30人いたそうで、それは気の毒だったのですが、学校全体で後押ししてもらったことが力になりました。
──次は全国になります。ウインターカップで勝つために、チームをどう仕上げていきますか?
インターハイで対戦した桜花学園は壁が分厚すぎたのですが、良い経験でした。それでも全国大会に出ても勝てないと面白くありません。インターハイでは基本的に6、7人で戦っていたのですが、選手交代が上手くいきませんでした。今回の決勝は11人、12人で戦って、誰が出ても同じように仕事をしてくれたので、全然違う形でチャレンジできると思っています。攻めの部分ではよく走ったと言われましたが、まだまだイメージしている走りはできていません。もともと走るバスケが基本ですが、今回はアウトサイドだったけど、それに4番、5番の選手も走って点を取る部分を加えたいです。
「選手とともにガッツポーズができる試合をしたい」
──多くの選手でローテーションして、走るバスケをやりきることが強みになりそうですね。
小さいチームが大きいチームに勝つには走るしかありません。ただ、速攻というのは相手が強ければ強いほどほとんど出せなくなります。だからアーリーオフェンスから遅行に移るところで思い切りの良いバスケをしないと、力のあるチームを破ることはできません。突破できなくても休むことなく動き続ける。オフボールの選手もトライし続ける。それを40分間やるには5、6人では戦えないので、10人以上が使える選手になって、本当の意味での全員バスケをやるしかないと思っています。
──インターハイでは3回戦で桜花学園に大敗を喫しました。敗因はどこにありましたか?
体力的なこと、技術的なこともありますが、一番はメンタルが弱かった。勝負どころで縮まってしまったり、力んでしまったりする選手が多かったです。選手を交代させても全く機能しませんでした。それが今回の県決勝では、出る選手がみんな活躍してくれたので、吹っ切ることができたんじゃないかと思います。桜花学園に負けたことがきっかけになったわけではなく、これまでの数々の失敗すべてが過程だったと思うのですが、よく間に合わせてくれました。
私は「選手とともにガッツポーズができる試合をしたい」といつも言うんですけど、今回がまさにそうなりました。このスタイルをさらに強いものにしてウインターカップを迎えたいです。
──今回のウインターカップで「これを成し遂げてガッツポーズをしたい」というのは何ですか?
今までのウインターカップでベスト8は3回経験していて、渡邉亜弥の時と内尾聡菜がいた時なのですが、その壁を破りたいですね。今アシスタントコーチをしている大石(萌夏)の時は赤穂さくらとひまわりがいた昭和学園と対戦して、残り1分で逆転したのですが、再逆転されて負けました。あとちょっとでベスト4が見えたのですが、そこから6年間離れてきたので、また再チャレンジです。そこを何とか超えられるよう、みんなで努力していきたいです。
去年はコロナで選手たちがかわいそうだという記事や特集がたくさん出ましたが、今の3年生はコロナの影響を2年間受けています。そんな中でこの舞台を与えてもらった、この前の県予選もそうでしたが、思いっきりバスケをやる姿をみんなに見てもらうことは非常に幸せだと思うので、その時間を一緒に楽しもうと思っています。
「守って走って、みんなで笑顔でバスケットを楽しんでやれる選手たち」
──学校としてスポーツが盛んですよね。ソフトボールの金メダリスト、上野由岐子選手も激励に来ていました。
上野選手はこの学校の出身で、13年前も東京体育館に応援に来てくれました。前身の九州女子高校の時からスポーツは盛んでした。私がこの学校に来た時は、バスケ以外は全部インターハイに出場していて、バスケだけが県大会に出れない状況からのスタートでした。今年はダンス部も全国大会で優勝しました。共学になって3年目ですが、野球部とかサッカー部が加わって学校のいろんな部分で元気が出たように思います。
──池田先生も教頭先生になったと聞きました。学校での仕事とバスケとの指導でのジレンマなどはありますか?
学校の仕事は今までもやっていたので、そんなに変わりません。教頭としては新米なところにコロナとか働き方改革も加わって大変な年ではありますが、アシスタントコーチも選手たちもしっかりしてくれています。大石に言われて思い出したのですが、彼女たちの頃はアシスタントコーチもトレーナーもいなくて私と生徒だけで、「3年生がアシスタントコーチだ」と言ってやっていましたから、今は恵まれています。
──大石コーチは、今回のウインターカップ予選で優勝して、初めて先生と握手したと感動していました。
大石は本当によくやってくれています。私が教頭になるので、山形銀行を辞めてここに戻ってもらってまだ半年ですが、学校の教員としても評価が高いですし、バスケ部の生徒に対する練習を見ても、半年とは思えない働きをしてくれて、かなり助かっています。今は私がいなくても同じ練習がやれるようになっています。
──ウィンターカップへの意気込みをお願いします。
まさしく彼女たちが決勝戦でやったパフォーマンスが若葉の魅力です。守って走って、みんなで笑顔でバスケットを楽しんでやれる選手たちですので、そういう試合を1試合でも多くやりたいです。そしてやっぱりメインコートで戦いたいので、是非とも若葉を応援してほしいと思います。