文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

最高のファンが見守る開幕戦「楽しかったし幸せでした」

10月7日のWリーグ開幕戦、JX-ENEOSサンフラワーズvs富士通レッドウェーブ。JX-ENEOSのキャプテン、吉田亜沙美はポイントガードとして攻守を牽引し、27分のプレーで10得点7アシストを記録。チームを開幕戦での勝利へと導いた。

会場となった代々木第二体育館は、早々にチケットが完売となり満員御礼。ただ3165人が入っただけでなく、会場の一体感であったり盛り上がりも相当なもの。試合前の「応援練習」、選手入場と優勝杯返還セレモニーの時点で、黄色に染まったJX-ENEOSの側の観客席は最高のテンションだった。

もちろん、これはリオ五輪効果。キャプテンとして吉田が牽引したAKATSUKI FIVEの目覚ましいパフォーマンスが、この夜の代々木第二の雰囲気を作り出した。

最高の雰囲気で開幕戦を迎えられたことに吉田は次のように感謝の言葉を述べた。「昨シーズンの開幕戦も満員でびっくりしたんですけど、それを超える今日だったので、それは素直にうれしいという気持ちと、オリンピックで自分たちが活躍したことが結果として、もちろんメダルを持って帰りたかったのが一番なんですけど、8位に入賞してその結果が皆さんが称えてくれて、バスケットを見に行こうという気持ちになってもらえたことに感謝しています」

「開幕戦が満員になって、立ち見の方もいて、その熱気はやっていても伝わりました。シュートが入るたびにJXの応援席が盛り上がっている、それも感じていました。一体感ではJXのファンが一番だと思うので、そういう意味でもファンの方のアプローチというか、応援の仕方だったり、その中でバスケットができていることは楽しかったし幸せでした」

オリンピックは晴れの舞台で、Wリーグは日常。『日常のバスケットボール』に帰って来た吉田は、『ホーム』の居心地の良さを感じながらプレーしたに違いない。

「このチームに所属していて、JXのファンの方は温かくて、選手を愛してくれているのがすごく伝わってきます。私たちが返せるのはプレーだったり、勝利を届けることなので、見ている方に向けて楽しさをコートで表現したいです」

「見ている方に向けて、楽しさをコートで表現したい」

吉田のパフォーマンスはまだ100%のそれではなかった。76-61で勝利した開幕戦、両チーム最多の7アシストを記録した『アジアのアシスト王』だが、同じく7つのターンオーバーを記録したのは『らしくなかった』と言うべきだろう。

ただ、そんな中でもチームをきっちり勝利へと導いたし、自らドライブで切り込んでレイアップシュートを狙うと見せかけて、ゴール下で完全フリーになっていた間宮佑圭に鮮やかなパスを通したシーンは、代々木第二を埋めた観客が最も沸いた瞬間であった(パスを受けた間宮が、あまりに素晴らしいパスに思わず笑ってしまいながらシュートを決めたほどだ)。

いずれにしても、吉田個人だけでなくチームとしても、まだこれから向上していかなければならない。8連覇中、メンバーも変わっていないJX-ENEOSだが、ヘッドコーチを務めるトム・ホーバスは、常勝チームを変えていくことに強い意欲を持っている。「みんなもっと良い選手になりたい、もっと良いチームになりたいと思っている。選手もチームもこのまま行くのでは良くない。ではどうやってこのチームを良くしていくか、変えていくか。今シーズンはいろいろ変えていきます」

吉田ももちろんその一人。オフェンスもディフェンスも変えていくというJX-ENEOSにあって、リーダーである吉田こそが最初にアジャストして、チームメートを引っ張っていかなければならない。「今シーズンは魅せるバスケットをやっていきたい」と吉田は言う。「なので、私も限られた時間の中で、出ている時に魅せるバスケットをやって、ファンの方に返していければと思います」

今日もJX-ENEOSは代々木第二体育館で富士通と対戦する。こちらもチケットはすでに完売となっているが、試合開始の16時から、youtubeの『ENEOS TV』でのライブ中継が実施される。