「大変光栄で素晴らしくかけがえのない時間でした」
今日、トム・ホーバスに指揮官が代わって最初の日本代表のメンバー発表があった。新たに代表候補入りを果たした選手が多数いた中で、比江島慎や富樫勇樹といった代表の『常連組』も招集されたが、田中大貴の名前はなかった。
田中は2016年のリオ五輪に向けた最終予選こそメンバー落ちしたものの、その経験をバネに攻守両面で大きく成長し、精神的な安定感も増した。『Bリーグの時代』になってから常にトップで走り続ける彼は、レベルアップする日本代表を引っ張る存在でもあった。
渡邊雄太に八村塁と、新世代の選手がNBAで活躍し、日本代表に加われば絶対的な存在としてプレーするようになった後も、『海外組』に付き従うのではなく、コート内外でリーダーシップを発揮しようとする気概を誰よりも見せていた。そんな姿勢を評価したからこそ、フリオ・ラマスは田中にポイントガードの大役を任せている。
リーグトップクラスの実力を誇る2ウェイプレーヤーだけに、ヘッドコーチ交代により今後の日本代表がどんなスタイルを志向するにしても、真っ先に招集されると思われた。だが、今回発表された予備登録メンバー24名に彼は入っていない。
メンバー発表から間もなく、田中は自らのInstagramを更新し、次のコメントとともに代表引退を発表した。
「次回の日本代表のメンバー発表がありましたが、自分としては東京オリンピックまでと以前から決めていました。JBAやホーバスHCともしっかりとお話しさせて頂きました。日の丸を背負いコートに立つ姿をバスケットを始めた当初は想像すらしていませんでしたが、大変光栄で素晴らしくかけがえのない時間でした。これまでの代表活動を応援して頂いた皆様、ありがとうございました」
2023年のワールドカップ、2024年のパリでのオリンピックまでプレーしても33歳。「まだまだやれる」と周囲は思うだろうが、この代表引退は田中が東京オリンピックにすべてを懸けていたことの裏返しでもある。