ネマニャ・ビエリツァ

「この10年のNBAで最高のチームの一員になることにただ興奮していたよ」

33歳の新戦力、ネマニャ・ビエリツァがウォリアーズで存在感を発揮している。3勝0敗と開幕ダッシュを決めたチームのセカンドユニットとして、17.3分の出場で7.7得点、6.7リバウンド、1.7アシストを記録。ウォリアーズの速いペースに合わせつつドライブで仕掛け、質の高いパスを通してオフェンスに深みをもたらすビエリツァを、指揮官スティーブ・カーは「パスの出し先を見つけるのが本当に上手い。我々は彼をただのシューターだとは考えていない。素晴らしいパサーであり、我々のチームにぴったりな選手だ」と表現している。

2015年にユーロリーグMVPになった後、2015-16シーズンにティンバーウルブズでNBAデビューを果たしたビエリツァは、そこで3シーズンを過ごした後にキングスで2年半を過ごした。キャリアベストの成績を残したのはNBA5年目の2019-20シーズン。チームの主力としてフル回転し、平均11.5得点を記録。それでもキングスは彼との契約延長を選択せず、ヒートにトレードした。

「僕は単なるストレッチ4じゃない。それが理解されないことに失望したけど、嘆いていても仕方がない。NBAでは与えられたチャンスでどんな結果を残すかだけが問われる。それだけ厳しい世界なんだ」と彼は言う。

それでも『単なるストレッチ4じゃない』ことを見抜き、評価したのがウォリアーズだった。サラリーキャップに余裕のないウォリアーズが提示したのは最低保証額の210万ドル(約2億1000万円)。NBAで6年間の実績を積んだビエリツァとしては、1年目よりはるかに安い単年契約を結ぶことに抵抗を感じてもおかしくないが、迷うことなくサインした。

「契約交渉は1分もかからなかった。僕の中では1秒だった。すぐに『イエス』と答えたよ。ウォリアーズはこの10年のNBAで最高のチームだ。その一員になることにただ興奮していたよ」と彼は言う。

これまでの彼の記録を振り返ると、フィールドゴール試投数の半分近くが3ポイントシュートとなっている。キャリアを通じた3ポイントシュート成功率は38.7%。210cmの身長があるが、ビッグマンではなくシューターに分類される選手だ。ただし、身体の幅を生かしてスクリーンをかけることもできるし、ただ待つだけでなく自ら動いてシュートを打つこともできる。ショートロールからパスを出すこともできるし、シュートチェックに寄せる相手の逆を突いてドライブを仕掛けることもできる。そういったプレーの幅の広さが、彼の言う『単なるストレッチ4じゃない』部分だ。

それでもビエリツァは、自らの多彩な能力の中でも一番の長所である3ポイントシュートが、このチームだからこそ最大限に生きると信じている。「ステフ(カリー)がコートにいれば、他の選手は全員オープンみたいなものだ。相手は絶対に彼を警戒するから、他の選手は楽になる。そのままシュートを打つのか、ドライブに行くか、パスするか。今までより少し考える余裕がある。その『少し』がとても大事なんだ」

「ウォリアーズのバスケは自由度が高い。それと同時に規律もしっかりしている」とビエリツァは言う。「今はステフとドレイモンド(グリーン)の動きを見て学んでいる。アイコンタクトで次のプレーを決めて、そこから先は阿吽の呼吸でやってしまう。それに近づきたいんだ。ここからどうなるか、すごく楽しみにしているよ」