開幕には間に合うはずが「検査の結果が出るまでは走ることは控えている」
ニューオリンズの地元メディアは、ペリカンズのバスケットボール運営部門バイスプレジデントを務めるデイヴィッド・グリフィンの欺瞞にあきれている。9月27日、トレーニングキャンプ始動に際してグリフィンは、ザイオン・ウイリアムソンが右足を骨折しており、プレシーズンゲームには出場しないことを明かした。ケガは8月8日にスタートしたサマーリーグより前のことと発表され、その時点で地元メディアはエースがケガをしているという重要事項が伏されていたことに不快感を示していた。
この時、グリフィンは「レギュラーシーズンに間に合うようにコートに戻って来る」と発言した。ところが今週になってヘッドコーチのウィリー・グリーンはザイオンの最新の状況として、「まだコンディション調整の段階で、ようやくコートで少し練習をし始めたところだ。ボールハンドリングとフリースローの練習はしているが、検査の結果が出るまでは走ることは控えている」と言う。
こうしてグリフィンはあらためて事情を説明しなければならなくなり、メディアに「開幕とは言っていない。レギュラーシーズンのどこかのタイミングに間に合うと言ったんだ」と弁明した。
だが、情報は明らかに食い違っている。ザイオンはシーズン始動の会見で「最初の公式戦には復帰できると思う」と語っていた。ところが開幕まで1週間にもかかわらず、ザイオンの復帰時期は未定のまま。エース抜きで開幕を迎えるのは確実だ。1週間程度なら大した問題はないが、実際はさらに長引くのではないか?
グリフィンは続ける。「確かにチームにとって理想的な状態とは言えない。しかし、最悪の状況というわけでもない。2週間か2週間半後に再び検査を受け、安全に復帰できるのであればその準備を進める。ザイオンにはできるだけ早く復帰してほしいが、同時に万全を期して復帰してもらいたい」
地元メディアの『NOLA』は「チーム始動の際にザイオンのケガを明かさなかったのはファンを騙す行為だ。ザイオンのプレーを楽しみにチケットを買うファンの期待を変えるようなアクシデントがあれば、公表すべきだ」と批判している。
ザイオンは2年目の昨シーズンに平均27.0得点、7.2リバウンド、3.7アシスト、フィールドゴール成功率61.1%を記録。すでに『チームの顔』としての存在感を確立している。彼がプレーできるかどうかで、ペリカンズの強さは大きく左右される。
そして心配なのは、グリフィンには嘘をつく必要がないのに、結果として稚拙な嘘をついていることだ。昨シーズン途中、ザイオンではなく彼の家族が「ペリカンズを離れるべき」とコメントしているとの報道があった。過去2シーズン、自分がモンスター級のパフォーマンスを見せても勝てないチームに、ザイオンが不満を感じている可能性はある。その不満からプレーしたがっていないのだとしたら、問題は非常に大きなものとなる。
問題がそこまで大きくなくても、ザイオンがペリカンズの管理下で自主トレを行ってケガをしたのは良いものではない。ザイオンは健康であれば素晴らしいパフォーマンスを見せるが、ケガの多い選手でもある。オフ期間であってもチームの練習施設を使っていれば、資格を持ったトレーナーやドクターのケアを受けられた。しかしザイオンは、彼の継父を中心とする自分だけのグループでワークアウトをしており、そこで今回の骨折をしている。ザイオンはケガについて「トレーニングを少々やりすぎた」とコメントしていたが、これをペリカンズがコントロールできていないのは問題だ。
ザイオンとブランドン・イングラムという若く多彩なエース格を2人も擁し、前途には希望しか見えないと思われていたペリカンズは、内部で揺れ動いているのかもしれない。