「立ち上がって、プロセスを踏みながら生きていかないといけないんだ」
現地10月10日、ヒートのユドニス・ハズレムが久々にチーム練習に参加した。
41歳のハズレムは8月下旬に父親が他界したため、トレーニングキャンプ開始からの2週間チーム練習への参加を免除されていた。チームを離れていた間は指揮官のエリック・スポールストラとだけ連絡を取り合い、気持ちの整理に時間を費やしていた。
チームに戻って来たハズレムは「今までで一番辛い出来事だった。父は自分にとって最高の親友だから」と、父の死を振り返っている。元セミプロレベルのバスケットボール選手だった父にあこがれてプレーするようになったハズレムは、父と同じ40番のジャージーを今も着続けている。背番号以外にも、バスケットボールに対する姿勢も父親の影響を受けているとハズレムは言う。「キャッチーなフレーズだったり、熱量や情熱だったり、周りを鼓舞して力を発揮させる。それが選手としての父だった。同じ姿勢で毎試合に臨んでいたよ。僕は父を真似ているんだ」
トレーニングキャンプ中だったこともあり、「みんなにはキャンプに集中してもらいたかった」との理由でチームメートや関係者に、父の葬儀に参列しないようハズレムは求めたが「それでも葬儀にはパット・ライリー、エリック・スポールストラ、クリス・クイン、スティーブ・ストウたち、ヒートファミリーの姿があったよ」と明かした。
父の死によるショックは大きく、ハズレムは再びチームに合流する気持ちを取り戻せるか分からない状態だったが、テレビでヒートのプレシーズンゲームを見た瞬間、身体がウズウズしたという。「みんながプレーしている姿を見た時、僕にとって光のように見えた。テレビで試合を見ていたらのめり込んでいたし、画面に向かってコーチングしていて声を出していた。やっぱり僕にはバスケットボールが大切だと感じた。みんなの存在こそ、僕が前を向くための光になる」
キャリア19年目のシーズンも、ハズレムはキャプテンとしてチームを盛り上げ、時に厳しい言葉をかけて奮い立たせる役割を担う。チームに再合流した日、ハズレムは現在の心境をこう語った。
「僕が前進する上で、またバスケがしたいかどうかとか、そういうことが大事ではなかった。僕はいつだってこのチームの一員でいたい。まだ情熱も意欲も、やれることもある。ただ、チームメートの力になれるかどうかが重要だった。自分が思うリーダー、キャプテンになれるかどうかが重要だったんだ。今も努力しているところだけど、今日は良い一日だったよ」
「人生はほんのちょっとした瞬間で変わってしまう。塞ぎ込んでも構わない。でも、ずっと倒れているわけにはいかない。傷ついてたって、泣いたって、悲しみに暮れたって構わない。一人になりたいと思っても構わない。そういう状況に直面したら、それは与えられる権利のようなものだ。でも、前を向いて歩き始めないといけない。立ち上がって、プロセスを踏みながら生きていかないといけないんだ」