「望んで打ったわけじゃない。強制されたようなものだ」
ウォリアーズは一昨シーズンに15勝50敗のNBA最下位という屈辱を味わい、昨シーズンに39勝33敗でプレーイン・トーナメント進出と持ち直した。来るべき新シーズンはクレイ・トンプソンが復帰し、ステフィン・カリーとのコンビが復活する。いよいよかつてのコアメンバーが揃い、チームとしての真価を問う。
しかし、トレーニングキャンプの開始前からコート外の話題ばかりが取り沙汰された。アンドリュー・ウィギンズのワクチン接種問題だ。昨シーズン途中の会見で、ウィギンズは「僕は強制されない限りはワクチンを打たない」と自ら明かした。ワクチンを接種しない選手は他にも多くいたが、ウィギンズだけが公言したことで議論の中心に置かれた。
チーム始動時点の会見でウィギンズは「僕の考えが正しいのか間違っているのか、それを君たちに説明しなきゃいけない理由が分からない。僕と君は別の人間で、僕の考えと君の考えは違う。それが当たり前だよね」とメディアに反発し、「強制されない限り受けようとは思わない」と繰り返した。
しかし、ウィギンズはワクチンを接種した。10月5日のプレシーズンゲーム初戦のトレイルブレイザーズ戦に先発出場し、16分間の出場で13得点を記録。試合後の会見で彼は「ワクチンを打つか、バスケを辞めるかの決断だった」と心境を語った。
「もうすぐシーズンが始まる。僕はバスケを辞めたくなかったし、ワクチンを打ちたくもなかった。でも僕はやらなきゃいけなかった。望んで打ったわけじゃない。強制されたようなものだ」
リーグや球団への不満は「ない」とウィギンズは言うが、不承不承だったのは間違いない。「僕の身体は僕のものじゃなかった、結局はそういうことさ。今の社会で働きたいと思えば、誰かが作ったルールに従って身体に何かを入れなきゃいけない。願わくば僕より強い人が戦い続けてほしい。そんな人がたくさん出てきて、自分の信じることを貫いてほしい」
「プレーできるのはうれしい。でも、ワクチンを接種したことはずっと頭に残っている。10年後に自分が健康でいられるか。遺伝子が損傷してガンの原因にならないかどうか、身体にどんな影響があるのか分からない。自分の身体に何が起こるか分からない、それが僕にとっては気掛かりだったんだ」
ウィギンズの中で猜疑心は残り続ける。それでも、これでバスケに打ち込む道が開けたのは事実だ。ウィギンズはチェイス・センターでプレーすることができ、ウォリアーズが特別なシーズンを送る可能性は確実に高まった。そして、ウォリアーズの周辺はようやく『王朝の再興』を話題にすることができる。