宮崎早織

決勝で26得点「最初からもっとやっとけよって話(笑)」

宮崎早織はアジアカップで主役を演じた。町田瑠唯が招集されなかった日本代表でポイントガードの先発を任され、11.6得点、9.6アシストと大活躍。持ち味のスピードを生かして日本の『走るバスケ』を体現し、決勝の中国戦では26得点を挙げて優勝の立役者となった。

「五輪メンバーがほとんどいなくて、若手で行くのは大丈夫かなと少し思ったんですけど、若いエネルギーが良い形になって、短期間で良いチームを作ってくれた恩塚さん(恩塚亨ヘッドコーチ)とスタッフに感謝しています。ベスト5を取れたのはすごくうれしいし、オリンピックではあまり試合に出れずに悔しさを持って挑んだアジアカップで、自分の持ち味を出せたと思います」

決勝の中国戦で突出したパフォーマンスを見せたが、宮崎に言わせれば「中国戦であれだけできるなら最初からもっとやっとけよって話だったと思う(笑)」である。「どの試合も相手に関係なく気持ちを出してやればあれだけできると証明できたのは良かったけど、1試合目から自分の力を信じてできるっていうのは今後成長しなきゃいけない部分」と、まだまだ満足してはいない。

宮崎の持ち味はスピードだけではない。決勝の中国戦では立ち上がりで全員が緊張から動きが重い中で、宮崎だけは全く関係なく得点を量産してチームに喝を入れた。そして試合終盤、重要な場面でのフリースローも緊張感とは全く無縁で、サクサクとフリースローを投じては2本成功させた。それに続く最後のフリースローでは笑顔までこぼれていた。

「オリンピックでもフリースローが決まっていなくて、トムさん(トム・ホーバス)から毎日のようにフリースローを練習させられていたので緊張はあまりなくて、練習をやりすぎてどうやったら試合中に楽に打てるかを考えて、『今日の夜ご飯は何だろう?』とか違うことを考えながら打っていました」と宮崎は笑う。

宮崎早織

「東京が悔しかった分、3年後にリベンジしたい」

ホーバスから恩塚へと指揮官が代わり、日本代表のバスケはベースは同じでも選手個々のアイデアやインスピレーションが発揮しやすくなった。全身全霊、かつ自由奔放なプレースタイルの宮崎にはこれがハマった。

「私は個人的にすごくやりやすくて、選手を信用してコートに送り出してくれるので、自分の一つひとつの選択は良かったり悪かったりしたけど、ネガティブではなくポジティブにとらえて、恩塚さんも『あのプレーは良かった』とか言ってくれていたので、恩塚さんにはすごく感謝していますし、使ってくれたから優勝できたしベスト5に選ばれました」

東京オリンピックに向けた代表合宿が始まる時点で、宮崎は自分が代表候補に選ばれることにも驚きを隠せずにいた。それでも厳しい生存競争を勝ち抜いてオリンピックメンバーに残って銀メダル獲得に貢献し、このアジアカップでは先発ポイントガードの重責をしっかりと果たした。このアジアカップでの結果で来年のワールドカップ予選への出場が決まり、2024年にはパリオリンピックも控えている。これから日本代表の主力になっていくであろう宮崎は、自分の先に開けている可能性についてこう語る。

「五輪からここまで自分が代表に呼んでもらって活躍できたのは自分も驚いています。パリ五輪に向けて、東京が悔しかった分、3年後にリベンジしたいので、ガード争いはすさまじくなると思いますが、一つはWリーグで持ち味を出すことがすごく大事。他の選手と比べるよりは自分のプレーに自信を持ってアピールするだけです」

所属するENEOSサンフラワーズでは吉田亜沙美、藤岡麻菜美の影に隠れる時期が長かったが、そこで腐らずに自分と向き合い続けた結果が、この夏の一連の快挙に繋がった。だが、まだ終わりではない。宮崎はもっともっと高いところまで羽ばたけるはずだ。