スローガンはコツコツを意味する『GRIND』
仙台89ERSは8月28日から31日までの4日間、南三陸町でトレーニングキャンプを開催した。
言わずもがな、南三陸町は東日本大震災の被災地である。『復興への希望のシンボルになりたい』という思いから過去には公式戦やプレシーズンマッチを開催してきたが、トレーニングキャンプの実施は今回が初の試みとなった。
あれから7年半が経過し、現在チームに籍を置く選手のほとんどが震災を経験していない。だからこそ全員で現地に足を運んで活動することで、被災したクラブチームの一員としての自覚を持つことも目的の一つとなった。
キャンプ初日には、チームのスローガン『GRIND』が発表された。もともと(豆などを)挽くや、細かく砕くという意味だが、転じて「コツコツ」や「骨を折って何かに打ち込む」、「一生懸命に何かをする」という意味を持ち、「どんな苦しい状況であろうとも、粘り強く泥臭く乗り越えてやってやろう」という思いが込められている。
代表取締役社長の渡辺太郎は「バスケットボールプレイヤーである前に、一人の人間としてしっかり成長していかなくてはならない。被災地にあるクラブとして、全員がその自覚を持ち、助け合い、思いやりの精神を大事にして行くこと、フィジカルだけでなくメンタルとのバランスを大切にして行くことが結果に繋がると思っています」と、今回のキャンプの意図を明かした。
「1年でB1昇格、5年でB1優勝」を目指して
Bリーグ初年度、仙台は残留プレーオフの末にB2へと降格した。1年での再昇格を目標に挑んだ昨シーズンだったが、18チーム中14位と昇格争いに加わることもできなかった。
そんな中、仙台は経営譲渡が行われ、今シーズンから全く新しい体制となっている。昨シーズン限りで引退した『仙台の顔』志村雄彦がGMとしてフロント入りし、新たなヘッドコーチには大阪エヴェッサを3シーズン指揮した桶谷大を招いた。掲げるビジョンは「1年でB1昇格、5年でB1優勝」。南三陸でのトレーニングキャンプを経てプレシーズンマッチ2試合を行い、山形ワイヴァンズには28点差の大勝を収めたが、富山グラウジーズには22点差の大敗を喫した。
「B1富山さんの胸をお借りして試合をさせていただきとてもありがたいし、勉強になった。南三陸で1週間お世話になり、ここからスタートしたチームがB1昇格するというのが合言葉になっている。ひとりひとりが責任を果たして成長して行きたい」と桶谷ヘッドコーチはコメントしている。
新体制になったからといっていきなり富山に勝てるほど、B1は甘くない。それが分かっているからこそ、スローガンに掲げる『GRIND』を継続していく必要がある。復興のシンボルとなるべく奮闘する、仙台の挑戦はまだ始まったばかりだ。