アジア競技大会で魅せた、経験と成長と意地「日本らしいバスケットでメダル獲得」

2018/09/06
日本代表
3084

女子日本代表

文・写真=小永吉陽子

篠崎澪、鈴木知佳、宮崎早織が見せた奮闘ぶり

目指していた色のメダルではなかったが、3位決定戦では日本の『走るバスケ』を表現してチャイニーズ・タイペイを76-63で下し、4大会連続となる銅メダルを獲得した。初代表組が多い今回の若きチームは、経験値こそA代表が出場していたライバル国には及ばなかったものの、アジアでもっとも速く、もっとも走り、大会一の成長を見せたチームとして存在感を示した。

特に成長を感じたのは3位決定戦での後半。日本は今季チャイニーズ・タイペイとは4度目の対戦であることからどこか受け身になってしまい、猛攻を食らって前半で26-33と7点のビハインドを負う。だが、流れが悪い時こそディフェンスのプレッシャーを強める原点に立ち返り、ガード陣が前から当たってはミスを誘って速攻を繰り出し、流れを一気に呼び込んだ。

ファストブレイクでのポイントは20点。これぞ日本が発揮したかった『走るバスケ』である。日本の速攻が決まるたびに、地元インドネシアの観客からは大きな拍手が巻き起こった。それだけ観客の目を惹きつけられるチームだったということだろう。

「私たちはA代表の魂を受け継ぐB代表だと胸を張って言えます。メダルを獲ったことは選手全員の経験と財産になる」と薮内夏美ヘッドコーチは言う。そんな伸び盛りのチームを支えたWリーグ勢3選手の『経験』と『成長』と『意地』を紹介したい。

女子日本代表

『経験』でチームを牽引したキャプテン、篠崎澪

2015年のアジア選手権にて、アジア女王と五輪切符獲得を経験している選手。そのアジア選手権では準決勝のチャイニーズ・タイペイ戦で、流れが停滞した時に走って突破口を開いた。同年に開催されたユニバーシアードでも、準決勝で女王アメリカを相手にしても怯むことなく、幾度もドライブを仕掛けている。今大会も同様に、苦しいところで誰よりも前に走って得点を重ねてきたのがキャプテンの篠崎澪だ。

リオ五輪の最終選考で落選した時に課題に挙げた3ポイントシュートも確率を上げ、3位決定戦の競った場面では得意の走りだけでなく、重要な場面で3ポイントも決めた。準決勝の中国戦で17点、3位決定戦で16点とポイントゲッターとしての活躍を見せている。

「もう一度、上(A代表)に行きたい気持ちはありますが、このアジア大会でチームを勝たせることが私の役目。若い選手たちに日本代表の戦い方を伝えたい」と臨んだ今大会。A代表でビッグゲームを戦ってきた経験とリーダーシップに若い選手たちはついていった。

「最後は勝って銅メダルを獲れたことは本当に良かったです。ホッとしています。3位決定戦の前半はチャイニーズ・タイペイのプッシュプッシュしてくる姿勢に受け身になってしまいましたが、後半に一人ひとりが気持ちを出して日本らしいプレーをしっかりやったことで、走る展開に持っていけました。特に、宮崎さんがディフェンスで前からプッシュしてくれて、チャンスのところでボールに全部飛びついてくれたので走ることができました。自分は前半に引っ張っていけなかったので、最後くらいはキャプテンらしいことしなきゃと、後半は体を全開に動かしてプレーしました」

「私自身、苦しい時にはプレーで引っ張っていこうとやってきたのですが、年齢が上になってきたので、これからは言葉でも気持ちでもプレーでも引っ張っていける選手にならなければと、この大会で学びました。金メダルは獲れませんでしたが、この若いチームが、準決勝と3位決定戦で日本らしいバスケを見せられたことが一番うれしいです」

女子日本代表

初代表ながら大きな『成長』を見せた鈴木知佳

準決勝と3位決定戦というビッグマッチにおいて、幾度となく苦しい場面でシュートを決めてはチームを救い、シックスマンとしての仕事をやり遂げた鈴木知佳。準決勝では17分32秒の出場で15点。3位決定戦では20分25秒の出場で11点。ドライブやミドルシュートを確実に決め、どちらの試合も1本だけ試投した3ポイントシュートを確実に決めている。初の代表選出とは思えないほどの冷静な判断力とシュート力を披露した。

日立ハイテククーガーズでも鈴木を指導する薮内ヘッドコーチは「彼女の成長には驚かされたし、とてもうれしいです。一緒にやってきた日数が長いので、『ここで鈴木を出したらやってくれるだろう』という信頼がありました。この大会が成長のきっかけとなるだろうし、自信につながったと思います」と愛弟子の成長を喜んだ。

183cmでセンター登録だが、3ポイントシュートが打てるのが強み。本人は今後の課題について「相手に応じてプレーを使い分けること」と語る。「中国のような大きいチームには脚力を使ったドライブが効いたし、そこで3ポイントも打てたらチャンスが広がると思うし、チャイニーズ・タイペイのような上背があまりないチームにはインサイドで対抗できるように、相手をよく見て自分の良いところを出せるようにしたい。初の日本代表でしたが、アジア大会に出てもっともっと上を目指したいと思うようになりました」

女子日本代表

土壇場で『意地』の速攻を繰り出した宮崎早織

『早織』という名前が示すように、とにかく速い。それも超がつくほどの高速である。JX-ENEOSサンフラワーズではスピードあるプレーで流れを変える役目だが、アジア大会ではスピードで流れを作るスタートの重責を果たした。

しかし、試合後に感想を聞くと、出てくる言葉は反省と課題ばかり。中国戦では「ガードのミスで負けたので自分のせい。スピードだけでなく、もっとA代表のガードのように頭を使ってコントロールできるようにならないと」と語り、3位決定戦でクリエイトした速攻についても「それは篠崎さんや林(咲希)さんが走ったおかげ。お姉さんたちの勝ちたい気持ちが出ていたので私も走りましたが、もっと取りやすいパスができたはず」、「中田(珠未)や梅沢(カディシャ樹奈)のリバウンドがあったので走れました。若い子たちのエネルギーに助けられました」とチームメートへの称賛を惜しまなかった。

だからこそ記しておきたい。3位決定戦で篠崎が勝因として語ったように、第3クォーターに仕掛けた宮崎のボールマンへのプレッシャーディフェンスから反撃が始まったのだ。

勝負どころで見せた鬼気迫るディフェンス、そして速攻でのプッシュ力は、スティール4本、リバウンド5本、アシスト11本のスタッツが示すように圧巻だった。本人が課題に挙げるように確かに手痛いミスもあった。だが、それらを全部取り返すほどの勢いと流れを作れるのも宮崎の魅力である。土壇場で出た「ここで負けてたまるか」という本能のディフェンスと走りは、たとえベンチスタートであっても、4シーズンの間、常勝チームで戦ってきた『意地』が出たのではないだろうか。

試合後の取材では終始課題を挙げていた宮崎だが、メダル獲得の感想を聞くと、ようやく大きな目を輝かせて笑顔になった。「メダルが獲れてホッとしています。もう泣きそうです。こんなにうれしいものなんですね」

アジア競技大会 女子日本代表
2 竹原レイラ (PF / 三菱電機 コアラーズ)
3 馬瓜ステファニー (SF / トヨタ自動車アンテロープス)
9 鈴木知佳 (C / 日立ハイテク クーガーズ)
11 篠崎澪 (SG / 富士通レッドウェーブ)
14 安間志織 (PG / トヨタ自動車 アンテロープス)
22 河村美幸 (PF / シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)
23 永田萌絵 (PG / 東京医療保健大学)
27 林咲希 (SG / JX-ENEOSサンフラワーズ)
32 宮崎早織 (PG / JX-ENEOSサンフラワーズ)
33 中田珠未 (PF / 早稲田大学)
45 渡邉亜弥 (SG / 三菱電機 コアラーズ)
66 梅沢カディシャ樹奈 (C / JX-ENEOSサンフラワーズ)
[ヘッドコーチ]薮内夏美