今オフ、宇都宮ブレックスではライアン・ロシター、ジェフ・ギブス、LJ・ピークの3人がチームを去った。特にロシターとギブスは精神的にも数字的にも宇都宮に欠かせない選手だったため、戦い方の変化だけでなくカルチャーを保てるかどうかが問われる。彼らとともにインサイドで身体を張ってきた竹内公輔も「普通に考えて、3人が抜けたのは大きい」と、そのことを理解している。それでも竹内は現在のチームに自信を持ち、「見とけよ」と静かに闘志を燃やしている。
代表落選「最後はこんなふうに終わるんや」
──代表活動も含めると短いオフになったかと思いますが、リフレッシュはできましたか? また代表から落選した時の率直な思いを聞かせてください。
ファイナルまで行きましたし、短かかったですね。気持ち的には海外でも行ってパーっとシーズン中にできないことをしたいんですけど、いかんせんこういう状況なので。特に代表合宿中は感染対策でずっと自分の部屋にいたので窮屈でした。
調子良くプレーできていて、手応えがあったので「俺、落とされるの?」と最初に感じました。代表で落とされる時は別室に呼ばれてコーチとミーティングをして、その時に告げられるんです。ストレッチとかしてる時に一人ずつ呼ばれるので、「あーアイツ落ちるんやー」みたいな感じですね。落胆というよりは、最初の数時間は信じられなかったです。
正直、東京オリンピックで代表は終わりにしようと思っていたので、最後はこんなふうに終わるんやという感じでした。もちろん、八村(塁)選手とかいるから、オリンピックでたくさん試合に出れるとは思っていなかったですけど、練習の感じだったら出れそうだと思っていたので。
──新シーズンはその悔しさをぶつけるイメージですか?
代表は別物だと思っているので、そっちよりも昨シーズンは天皇杯とリーグのファイナルで2回負けているので、そのモチベーションでやるというのが大きいです。
長年ともに戦ったロシター、ギブスとの別れ
──ロシター選手、ギブス選手、ピーク選手が移籍する波乱のオフとなりました。特にロシター選手やギブス選手はインサイドの要として長く一緒に戦ってきましたが、相談などはありましたか?
相談はなかったですね。僕が残ってくれと言って迷わせるのもかわいそうですし、本人とはそういう話をしていないです。代表合宿中に話があるから比江島(慎)と一緒に部屋に来てくれないかと連絡が来て、わざわざブレックスに残ると言うために部屋に呼ばないので、その時に察しました。咎めるわけでもなく、「俺らは何も変わらないよ」という感じで3人で話し合いました。
──ロシター選手はどのような表情でしたか?
苦しそうに打ち明けていました。申し訳ない感情なのか寂しい感じなのかはちょっと分からなかったですけど、苦しそうな感じでしたね。でもわざわざ部屋まで呼んで面と向かって言ってくれるのは律儀だなと思いました。僕らには面と向かって移籍する報告をしてくれましたが、チームのみんなにもLINEとかで送ってたみたいで。日本人より日本人やなって思いました。
──ギブス選手はトヨタ自動車時代を含めると8年間一緒でしたが、少なからず思い入れがあるのではないでしょうか?
あいつは何も言わないでスッと去っていきました(笑)。2人のギャップがすごいです。ライアンも含めてお互いのことをリスペクトしているし、ジェフはジェフの考えがあって長崎(ヴェルカ)に行ったと思うので。ジェフはカテゴリーが違うので、もしかしたら会うことがないかもしれないのはちょっと寂しいですね。
──会えないかもしれないということで、一番印象に残っているギブス選手とのエピソードは何でしょう?
初年度に優勝した時にジェフはアキレス腱を断裂したんですが、優勝できたからアキレス腱切っても全然良いみたいな感じでした。僕も昔アキレス腱を切ったので「公輔、俺もアキレス腱切っちゃったよー」って言われました。そして、「そんなことより、お前とファイナル行ったら全部勝ってるよ」って言われたんです。トヨタ時代も一緒に優勝しているので、そう言えばそうだみたいな感じだったんですけど、優勝してわざわざ自分に言ってもらえたことが一番印象に残っています。全部勝ってるといっても2回で、昨シーズンに3回目で負けちゃったんですけど(笑)。
──帰化を含め、外国籍選手3人が抜けた穴は大きいと思います。特にロシター選手はBリーグ以前から宇都宮のカルチャーを作り上げてきた中心選手ですが、竹内選手にはそれを継承していくことが求められるのではないでしょうか?
ライアンはおしゃべりでフレンドリーなので、新しく来る外国籍選手にもライアンが話しかけていました。僕も率先してやりたいですし、僕以外にも田臥(勇太)さんだったり、俗に言う『ブレックスメンタリティ』を体現してくれる選手がたくさんいるので、自分1人で2人が抜けた穴を背負い込む必要はないと思っています。
──メンバーの入れ替わりがあり、厳しい戦いを強いられることになる可能性もありますが、どのように捉えていますか?
ファンの方々がどう思っているのかは分かりませんが、他のチームからは今シーズンのブレックスはちょっと落ちたなって思われているかもしれないです。普通に考えて3人が抜けたのは大きいので、そう言われるのはもちろん理解していますけど、「見とけよ」って感じです。
「読めないところがまた楽しみでもあります」
──3選手が抜けて、竹内選手の役割も変わったりしますか?
昨シーズンまではライアンとジェフとがいたシステムだったので、それがちょっとどころじゃなくて結構変わったので役割も変わるかなと思います。3、4年やってきたことが変わるので、身体に染み付いていた分、考え方を変えていかないといけないと思っています。
特に比江島は1人で抑えられる選手じゃないので、そういった選手にマークが寄りやすい分、合わせをしっかりやっていきたいです。これまで以上にスペースを広げることをシステムとしてやっているので、よりフロアバランスを考えながらプレーしないといけません。
──また新たなチャレンジとなりそうですね。
これまではずっと同じメンバーで、戦力も揃っていたので、普通にやれば良い成績が残せるだろうという、ちょっとした気持ちの余裕がありました。今シーズンはかなり変わって、読めないところがまた楽しみでもあります。
昨シーズンは本当に悔しい思いをしたので、もう一回ぐらい優勝したいです。やっぱり最高じゃないですか? シーズンを笑って終われるのは。仕方ないですけど、こういう情勢がみんなを暗くしているので、自分たちが優勝して応援してくれた人たちを少しでも明るくしてあげたいなという思いももちろんあります。
──笑って終われるのは1チームだけで、チャンピオンシップに出れないチームもたくさんあります。それでも、強豪であり続けるという自信はありますか?
初年度に優勝した後にメンバーが抜けて苦労したんですけど、次のシーズンもチャンピオンシップに行けました。あれを経験しているのは大きいですし、今年もやれると思っています。
──最後にファンへのメッセージをお願いします。
ライアンやジェフが抜けて戦力ダウンをちょっと心配される方々もおられると思うんですけど、新しく来た選手も素晴らしい選手たちです。みなさんが少しでも笑顔になってくれるように自分たちは精一杯プレーしますので、どうか安心してブレックスの応援をよろしくお願いします。