リッキー・ルビオ

「再建を成功させるのは本当に難しい。だからこそ僕は本気で取り組みたい」

リッキー・ルビオはキャバリアーズのロスターの一覧を見て、そのあまりの若さに笑ってしまったそうだ。

ここ2シーズンで在籍したサンズもティンバーウルブズも若いチームだったが、キャブズはさらに若い。しかもコリン・セクストン、ダリアス・ガーランド、アイザック・オコロ、ジャレット・アレンにNBAドラフト全体3位で指名したエバン・モブリーと、全体的に若いロスターの中でも年下の選手が主力を務める。だが、若さはこのリーグではマイナスにもなる。将来性があるからと言って明るい未来が待っている保証はなく、このチームはレブロン・ジェームズが去ってから常に『再建中』だ。レブロンのラストシーズンはポストシーズンも含めて62勝を挙げたのだが、この3年でわずか60勝しかしていない。

ルビオの笑みには、かつての『若き天才司令塔』だった自分が年老いたという実感もあるのだろう。だが、キャブズの一員として初めての会見に臨んだ彼は、かつての自分と同じ若き才能を導く役割を喜んで受け入れると語った。

「才能ある選手にもっと上達できると伝えたい。その役割は得意なんだ」とルビオは言う。「このリーグで最も難しいのは、素晴らしい1年を過ごすことじゃない。その後により良い1年を過ごすことなんだ。『僕にはもっとやれる力がある』と信じられるかどうか、そういうメンタル面での挑戦だ。ドノバン・ミッチェルにもデビン・ブッカーにも、僕はそのことを伝えてきた」

移籍が決まったのは東京オリンピックの真っ最中。その日はスペイン代表で最年少のチームメート、ウスマン・ガルバが1巡目23位でロケッツに指名されたお祝いがあった。そこに参加しようと部屋を出たルビオが何となくスマホを取り出した時、大量のメッセージが届いていたことに気付いた。エレベーターの前で彼は移籍を知り、しばらく動けなくなった。ルビオは自分を信頼してくれるチームで、腰を落ち着けてプレーすることを好み、毎年のようにチームを変えるのは本意ではない。しかもこのトレードは、彼は巻き込まれたようなもの。スペインの地元紙には「もう疲れた」と弱音を漏らしている。

だが、オリンピック終了後のオフで心身の疲れを癒した今、ルビオは新しいモチベーションを持ってクリーブランドにやって来た。

「球団は僕にベテランとしての役割を期待している。僕はそれをこなしつつプレーでも貢献するつもりだから、プレータイムが長くなることを望んでいるよ。僕はベンチでああしろ、こうしろと言うタイプじゃない。練習でも試合でも、自分が一番にやることで模範を示す。ここにいる全員がエリートで、ただ年上だからとアドバイスに耳を傾けるわけじゃない。僕は言葉で何かを教えるのではなくて、挑戦を与えるんだ。このチームの若い選手たちがその挑戦にどう取り組むのかを見てみたい」

「どの選手も『自分には何でもできる』と思ってこのリーグにやって来る。でも、チームはそれぞれの選手に対し、チームに貢献できる方法で力を出すことを望む。全員に役割があって、選手はそれぞれその役割の中でベストを尽くすんだ。ピースを組み合わせて機能させて、初めてチームは上手くいく。このチームでそれを実現する手助けを僕はやれると思っている」

いくら実力があっても、思うようなキャリアを築くことができるとは限らない。それでも、ルビオには現実を受け入れ、与えられた場所でベストを尽くすという精神的な頑強さを失っていない。

「優勝候補のチームでプレーできるものなら、そうしたいという気持ちはあるよ。でも今はそうじゃない。キャブズも同じだよね。このチームが次のステップに進む、『再建』を成功させるのは本当に難しいことだ。でも、だからこそ僕は目の前の挑戦に本気で取り組みたい。大きな挑戦だからこそ、楽しみにしているよ」