ケビン・ポーターJr.とジェイレン・グリーンを育てたいロケッツに居場所なし
ジョン・ウォールとロケッツは協議の上、トレードでの退団を模索するという方針を決めた。
ウォールは昨年オフにラッセル・ウェストブルックとのトレードでロケッツに加入した。アキレス腱断裂のケガでどれだけプレーできるか分からない状態での移籍だったが、2年ぶりの実戦復帰で40試合出場、20.6得点を記録。大ケガをする前のようにエースとしてフル回転するのは難しいかもしれないが、ケガ以前に近いレベルの爆発力を実際に見せたことは大きな前進となった。
しかし、ロケッツとしてはウォールが中長期的なチーム構想に入らなかった。昨シーズン序盤にジェームズ・ハーデンがトレードを要求して退団したことで、チームは若手を中心として再建に舵を切ることになり、ドラフト1巡目2位で指名したジェイレン・グリーン、そして昨シーズン途中にキャバリアーズから加入したのを機にブレイクしたケビン・ポーターJr.が今後のバックコートの軸となる。ウォールとしては、まだケガからの復活を印象付けるためにメインのポイントガードとしてプレーしたいところだが、これはロケッツの方針と噛み合わない。
ロケッツからすれば、ケガのリスクを乗り越えてウォールが復活して、ハーデンと強力バックコートを形成できるはずだったが、ハーデンの退団によりウォールは活躍の場を失ってしまった。残り2年で9100万ドル(約100億円)の契約を残すウォールのトレードは簡単ではない。若手にチャンスを与えるために、バイアウトを含めて相当な譲歩をせざるを得ないだろう。その点では1年前、どれだけプレーできるかも分からなかったウォールを手放し、ウェストブルックを経由してカイル・クーズマを筆頭に多くの即戦力を手に入れたウィザーズは素晴らしい立ち回りを見せたと言える。
話をウォールに戻すと、バイアウトを経て、ベテラン最低保証額ではなくともチームに組み込みやすい年俸になったと仮定すれば、考えられる移籍先はいくつかある。その一つがナゲッツだ。膝を手術したジャマール・マレーは2021-22シーズンの終盤まで復帰できず、ファクンド・カンパッソとモンテ・モリスだけではポイントガードの戦力は物足りない。プレーオフでの上位進出が狙える力を秘めたチームだけに、ここでウォールの経験に託すのは悪くないアイデアに思える。
もう一つはペリカンズだ。ポイントガードのロンゾ・ボールを手放し、デボンテ・グラハムとトーマス・サトランスキーで新シーズンを迎えるが、ウォールが来れば先発ポイントガードを任せられる。ウォールがプッシュして速い展開を作り出すことでブランドン・イングラムの万能性はさらに効果的になりそうだ。ザイオン・ウイリアムソンに見限られ、アンソニー・デイビスに出ていかれた二の舞になることだけは避けたいペリカンズにとって、ウォール獲得は悪い選択肢ではない。
さらに、今オフで最も注目されているセブンティシクサーズのベン・シモンズがトレードの対象となるシナリオも考えられる。ロケッツもシクサーズもトレードせざるを得ず、この状況で意識は『いかに損をしないか』だけに向けられる。シモンズは昨シーズンのプレーオフで大きく評価を下げたが、堅固なディフェンスに力強いボールプッシュと長所に目を向ければ今もなおオールスター選手であり、ウォールと違って25歳と若いため再建プランに組み込むこともできる。一方のシクサーズはウォールを引き受ける代わりに指名権を得る。そして何より、この夏を騒がせたシモンズの問題から解放されて新しいシーズンへと向き合うことができる。