アダム・シルバー

誰しもが魅力と思えるトーナメントは存在しない?

NBAをさらに盛り上げていきたいと考えるコミッショナーのアダム・シルバーはシーズントーナメントの開催を望んでいる。だが、彼の熱意に反し、クラブや選手サイドには共感する人がほとんどいないのが現実だ。

『The Athletic』によると、リーグはこうした現状を変えるための方法の一つとして、トーナメント優勝者に賞金を与えるシステムを提案したという。勝利したチームの選手に100万ドル(約1億2000万円)の報酬が与えられることは、特にサラリーの安い選手にとっては魅力的だ。選手の収入自体は増えるのだから、スター選手たちも重い腰を上げて協力するかもしれない。

だが、チームの成績を左右する実力を持つスター選手にとって100万ドルは微々たるモノであり、トーナメントの導入で過密日程がさらに厳しくなり、ケガのリスクが高まること、肝心のポストシーズンに万全の状態で臨めなくなる不安の方が大きい。また、一昨シーズンから導入されたプレーイン・トーナメントが成功しているのは、タイトル争いに直結しているからで、あくまで単発の大会で、リーグ戦と同じ価値にはならないであろうシーズントーナメントに全力を注ぐ選手は少ないだろう。

以前から、シーズントーナメントの開催については議論され、優勝チームに追加のドラフト指名権を提供するという案も出た。クラブやそのクラブを応援するファンにとっては魅力のある話だが、やはりスター選手が全力プレーをする動機付けとしては弱い。

さらに言えば、ドラフトはNBAのパワーバランスを保つための制度で、下位チームにチャンスを与えるために存在している。そのため、トーナメントに優勝するほどのチームに追加の指名権を与えることは、その目的に反している。

ただでさえタフなスケジュールのNBAにとって、トーナメント用の日程を新たに組み込むことは相当難しいはずだ。シーズントーナメントを開催するハードルはあまりにも高い。