ベンドラメ礼生

思い切りの良いシュートと突破力を持ち味とする、サンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生は、常に日本代表候補に選ばれてきたが、最後の12人目に残れない悔しい思いをし続けてきた。しかし、今回のオリンピックでついにその座をつかみ取り、日の丸を背負った。それでも、オリンピックでは思うようにプレータイムを得られず、チームが『世界での1勝』を挙げられなかったこともあり、彼には「不完全燃焼」の思いしか残らなかった。一つの目標を達成し、新たな感覚で新シーズンを迎えるベンドラメに話を聞いた。

「13人目から12人目にはなれたけど、そこまでの選手だった」

──東京オリンピックで念願の日本代表に選出されましたが、どのような思いでしたか?

めちゃくちゃうれしかったです。今回のオリンピックに向けて、他の選手もすごい気持ちが入っていたので、普段の合宿からすごいストレスの中バスケットをしているという感じでした。それを乗り越えて選ばれたので、すごくうれしかったです。

──結果的にプレータイムはあまり多くもらえず、3連敗でオリンピックは終わってしまいました。オリンピックを経て、得たモノや気持ちの変化はありますか?

国際強化試合だったり、合宿をしていた中で個人的には手応えがあったので、正直もっとチャンスがあるかなと思っていました。なので、チャレンジする前にオリンピックが終わってしまったという感覚があります、世界のトップレベルの国と試合ができる中で自分の通用する部分や試したい部分がすごくあったし、楽しみにしていたので、そういったところを考えると不完全燃焼というか、すごいもどかしい終わり方をしたなと個人的に思います。

ヘッドコーチを批判するとかそういう訳ではなくて、結果的に監督の戦術の中にまだ入り込めていなかった。13人目から12人目にはなれたけど、そこまでの選手だったと自分の中で落とし込まないといけないのかなと思います。自分が出られなかったことで周りに目を向けても良いことないですし、次に向けて良い経験になったんじゃないかなと思います。ただ、ずっと合宿をしていたので、正直ちょっとバスケから離れたいという気持ちはありましたね。

──濃密な時間を過ごしてきたと思いますが、それほどキツかったのですね!

毎日キツかったです。20人から12人に絞られても練習メニューが全然変わらず、交代がいないのにずっと5対5をやったりしていました。その練習中も1つのミスだったり、1つのシュート、パスを見られてメンバーが決まる。毎日お互いを潰し合うじゃないですけど、競争がすごかったので今回は精神的にもすごく疲れました。

オリンピックまでは出し切って、後はオリンピックで残りを出すだけという感じでした。みんなで100%で競争してきたし、メンバーに入れなかった選手も期待してくれていたので、その分コートで良いパフォーマンスを見せたいなという気持ちはありました。

ベンドラメ礼生

「悔しさをバネにとかよく見る言葉すぎて、あまり好きじゃない」

──オリンピックでの悔しさやもどかしさをBリーグでの新シーズンにぶつけていくという感じでしょうか?

どうですかね。「悔しさを胸に」とか以前はよく言っていたんですけど、今はあまり思わないですね。なんて言っていいか分からないですけど、「悔しさをバネ」にとかよく見る言葉すぎて、あまり好きじゃないんです。そういうつもりでやっているのではなく、ただ上手くなりたいとか、代表に入りたいから頑張っているので。

──年齢を重ねて、悔しさを理由にせずともモチベーションを高く維持できているということですね。

そうですね。代表は僕の中ですごく大きい存在で、今回オリンピックを経験して、初めて次のオリンピックに出たいという気持ちが強くなりました。次のパリオリンピックが3年後で、今までは代表メンバーに入ることが目標だったのですが、次のオリンピックに出るという目標に一つ上がったという感じです。

──世界を経験をしてBリーグ全体や個人的にもっと向上させたいという部分はありますか?

代表の合宿をしていて思ったのが、トップレベルの選手が集まっているその上で、日本で一番激しい練習をしているんじゃないかということです。もちろん、みんな代表のメンバーに入りたくて、お互いを高め合いたいからそういう練習になるんですけど。

Bリーグが目標で、プロ選手になって一つの目標を達成したことで満足するのも分かります。でも日本のバスケットのレベルを上げるとなるとそこから競い合わないといけないので、難しいですけど全員が日本代表を目指してほしいというか、向上心を持ってやってほしいなって思います。何様?って感じですけど(笑)。そうしないと日本のレベルも上がっていかないと思うので。日々の練習から世界を意識して取り組みたいと思えるようになったのは、得たことの一つです。

ベンドラメ礼生

「毎日の練習をヘバるまでやっていけば何とかなる」

──現在はチームに戻って練習を進めていると思います。コアメンバーが残った今シーズンのSR渋谷をどのように見ていますか?

昨シーズンは個人的にすごくやり切れて、すべてを出し切ったと思えるシーズンでした。それでも勝てなかったということはそれにプラスして何かをやっていかないといけない。土台となるサンロッカーズのディフェンスはある程度できているので、そこに新しく入った選手に早く追いついてもらって、その中で普段やっているディフェンスをもう1歩詰めてみるとか、小さな変化をたくさん作っていった方がいいのかなと思います。同じことをやっていても勝てないので、昨シーズンやったことにプラスして成長していけたらと思っています。

──チームの核となる立場だと思いますが、そういったリーダーシップについてはどう考えていますか?

チームをまとめるとか引っ張るというのは、一人ひとりがそういう意識を持ってやっていけばいいと思っていて、僕がやらなきゃいけないとは思っていないです。ただ、毎日の練習で「昨日よりも成長したい」と思っているので、練習で取り組んでいるその姿勢がチーム全体に伝染していけば、良いチームが作れるんじゃないかなと思っています。

──目標はもちろん優勝だと思いますが、かなりの補強を行ったチームも多々あります。

どこも強いですよね。なので、やはり自分たち次第なのかなと思います。昨シーズンの時点で、どこのチームにも負けないくらいのディフェンスはできていたと思うので、いかにオフェンスで点数をしっかり取れるかどうかですね。激しく守る分トランジションも速くなり、攻める回数も多くなると思います。(高橋)耕陽はすごく走れて縦の突破力がある選手だと思っているので、積極的に点数に絡んでほしいと思います。オフェンスがダメでもディフェンスで流れを作っていける、そういう安定したチームになりたいです。

──個人的な目標はどうでしょう?

プレータイムも増えてくると思うので、出ている間は100%で動けるようにしないといけないと思います。もちろんフル出場はないと思うんですが、40分間出れる準備をしていきます。昨シーズンはディフェンスを頑張って、オフェンス時に体力が残っていなかったりしたこともあったので。毎日の練習をヘバるまでやっていけば何とかなるんじゃないかなと思っています、練習にすべてを注げば結果はついてくると思っていて、毎日を無駄にしないようにしています。それをやり続けることがすごく大事だと思っているので。

──では最後に、ファンの方々に向けてメッセージをお願いします。

代表に入った時もたくさんのメッセージをいただいて、隔離しながらの合宿だったのでそれが精神的な支えになって、すごくうれしかったです。いざオリンピックが始まってなかなかプレーを見せることはできませんでしたが、その分Bリーグを楽しみにしていてください。皆さんを楽しませる準備をしているところなので、 必ず良いパフォーマンスをします!