プレーオフでシュートが絶不調に、難航するトレード
ベン・シモンズはセブンティシクサーズ敗退の戦犯となった。レギュラーシーズンではネッツ、バックスを抑えて東カンファレンスのトップに立ち、ジョエル・エンビードとシモンズを中心に作られたチームはその集大成としてNBA優勝を目指したが、カンファレンスセミファイナルで敗れた。
シモンズにとっては、結果以上にその負け方が悪かった。もともと得意ではないシュートが絶不調に陥り、そこをホークスに狙われた。わざとファウルされて与えられたフリースローが決まらず、心証は最悪なものに。GAME7までもつれたシリーズを通して、シモンズのフリースローは45本中成功わずか15本と、ホークスの『ハック・ザ・シモンズ』は大成功。最後の試合ではわずか5得点、フリーのチャンスでもシュートを打たずにパスを選択するなど、完全なスランプに陥っていた。
あれから2カ月。シモンズはトレードされるものと見なされているが、動きはない。彼はオリンピック参加を辞退し、ワークアウトに励んでいるという。最近になって練習中の動画がトレーナーなど関係者によって投稿され、そこでは3ポイントシュートを決める姿もあるが、ディフェンスがおらず何のプレッシャーもない状況でいくら決めたところで、彼の評価が戻るはずもない。
シモンズはシクサーズとの連絡を絶っており、このままトレーニングキャンプが始まっても合流しないのではないか、という関係者の証言がある。だが、シクサーズは彼をトレードするつもりではあっても、あくまでオールスター選手として、優勝に貢献できる戦力との見方を変えず、オールスタークラスの選手と複数の1巡目指名権を求めているとされる。
しかし、昨シーズンのプレーオフを見れば、シクサーズ以外のどのチームも、とりわけプレーオフでシモンズが決定的な働きのできる選手とは見なさない。『The Ringer』はあるスカウトのコメントを紹介している。「彼が41勝のチームにいたら、何の問題もなかった。例えばキングスにいれば、このような激しい議論にはならない。しかし、カンファレンスセミファイナル、カンファレンスファイナルに進出すると話は別だ」
シモンズが抱えているのが技術ではなくメンタルの問題で、それを修正できるのはスパーズのグレッグ・ポポビッチだという意見がある。昨シーズン33勝のスパーズで再起を図るのは『アリ』かもしれないが、シクサーズが満足するようなトレードの材料がない。他にトレード候補として名前が挙がるチームはいくつかあるが、どれも現実味に欠ける。キングスはスパーズ同様に交換材料に乏しい。ウォリアーズはシモンズを欲しいとしても『王朝』を築いた選手たちとトレードしてまで、とは思わない。
面白いのはトレイルブレイザーズの新たなヘッドコーチにチャウンシー・ビラップスが就任し、「ディフェンスを重視する」、「ペイントにアタックする」、「アシストを増やす」と新たなバスケの方向性を語るたびに、ブレイザーズのファン以上にシクサーズのファンが盛り上がることだ。つまり、そこにはシモンズが必要で、デイミアン・リラードとのトレードに光が見えた、と感じているのだ。ビラップスのバスケにシモンズはフィットするかもしれない。しかし、昨シーズン終了時点では球団の方向性に疑問を抱いたかもしれないリラードだが、今は新体制で再び優勝を目指す意思を固めた様子。リラードが自らトレードを志願しない限り、ブレイザーズは動かない。
かくして、2カ月に渡り何の動きもないまま、ただただ時間が経過している。ダリル・モーリーはとにかく手数の多いGMで、ロケッツでは不可能としか思えないトレードを毎年のように成立させてきた。リラードとブレイザーズの状況と違い、シモンズとシクサーズはこのまま新シーズン開幕を迎えるのがチームにとって良いことだとは思えない。残された時間でシクサーズがどんな手を打つか、注目して待ちたい。