「人としての私を評価して採用してほしい」
スパーズのアシスタントコーチを務めるベッキー・ハモンは、2020年12月30日のレイカーズ戦でグレッグ・ポポビッチが2度のテクニカルファウルを受けて退席処分となったことで、女性として初めてNBA公式戦を指揮したコーチとなった。
ハモンはNBA初となるフルタイムの女性ヘッドコーチに最も近い位置にいるが、その実現には至っていない。これまでにバックス、ニックス、ピストンズ、ペイサーズ、サンダーと様々なチームのヘッドコーチ候補に名前が挙がったが、その先のステップに進むことはなかった。
『女性だから』という理由でハモンが落選したかどうかは分からないが、ハモンは性別が問題にならない世界が来ることを望んでいる。『AP通信』のインタビューを受けたハモンは「これはとても大きくて重要なこと」と持論を展開した。「スポーツ界では、世界の人口の半分の人が持つ人間性や能力、スキルセットを利用していません。これは変えなければいけないことなのです」
ハモンは今後もヘッドコーチを目指していくが、『女性だから』ではなく、正しい理由による選考であることを強く望み、「私の持つスキルセットやコーチングなど、人としての私を評価して採用してほしいです」と語った。
ハモンは今オフもテリー・ストッツ解任を決めたトレイルブレイザーズでヘッドコーチの最終候補に残ったが、結果的にチャウンシー・ビラップスが選ばれた。ビラップスに過去の婦女暴行疑惑が取り沙汰され、女性蔑視の球団と見られることを嫌ったブレイザーズが、その風評を消すために女性のハモンを候補に加えたという噂もあったが、ハモンはそれを否定した。
「リーグ全体の組織やスポーツ界全体のことは言えませんが、ブレイザーズが私を正しくコーチと見なして採用を検討していたことは確かです。このレベルになると、その仕事に最も適した人、その組織に最も適した人を雇わなければいけないのです」
ポポビッチは彼女を雇い入れた時から一貫して、性別には関係なく一人のコーチとしてハモンの手腕を評価してきたと同時に、彼女が向き合うであろう困難を早くから予想していた。あらためて、コーチとしての能力だけを評価してほしいと訴えたハモン。指揮官として、彼女がコートに立つ日が来るのはそう遠くないはずだ。