悪い流れを断ち切った2度の5連続得点
「ただただうれしいです。この仲間たちは本当に尊敬できる選手ばかりです。また次も一緒に戦えて、本当に良かったです」
このように勝利の喜びを表現したのは、バスケットボール女子日本代表の本橋菜子だ。日本はベルギーとの準々決勝に勝利し、オリンピック史上初となるベスト4進出を果たした。
86-85という最終スコアが示すように、どちらが勝ってもおかしくない熱戦だった。両チームの実力が拮抗している時ほど、ベンチメンバーの活躍が大事だ。特に前線からプレッシャーをかけ、高さの不利を運動量で補うスタイルの日本にとって、タイムシェアができるかできないかは勝敗を左右する要素となる。主力にプレータイムが偏れば、疲労が蓄積し終盤のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。
こうした中、約12分間の出場で10得点を挙げた本橋の活躍は数字以上に大きな意味を持っていた。特筆すべきは、それらの得点を挙げた時間帯が劣勢だったことだ。日本は第2クォーター序盤の3ポイントシュート攻勢で一時2桁のリードを奪ったが、その後ディフェンスを崩せずに得点が止まり、2分半で0-10のランを浴びた。流れを変えるべく投入された本橋はすぐさまドライブを成功させると、次のプレーでも強気に3ポイントシュートを沈めた。また、第3クォーターにはこの試合最大となる13点のビハインドを背負った直後に、3ポイントシュートと2本のフリースローを成功させて悪い流れを断ち切った。無得点の時間が続けば続くほど、メンタル的にシュートをためらってしまいそうになる。だが、本橋は強気を貫いた。
「これまでプレータイムが少なかったですが、逆にその中でいかに自分ができることを出せるかと考えたことで、もう迷わずにプレーすることができるようになりました。今大会に入ってからシュートタッチはずっと良い感じはしています。今は積極的にシュートを狙っていて、チームの勢いに自分も乗っかって、もっともっと積極的に行きたいという気持ちになっています」
本橋がこうした強い気持ちでプレーできるのは、日頃の練習の賜物だろう。本橋も「このチームで歴史を変えたいし、そのためにずっとみんなときつい練習を乗り越えてきました」と言う。指揮を執るトム・ホーバスも練習が厳しいものだと認めている。そして、ホーバスは「楽しい練習はない」と持論を展開した。
「(ブザーが鳴った時は)選手たちの顔も最高の表情をしていました。女子日本代表の練習は厳しいですと選手たちによく言います。だからこそ、勝つことが一番楽しい。楽しい練習というのはなく、楽しいことは勝つことであり、優勝することです。これまでアジアカップで優勝してきましたが、その時のみんなは最高の表情を見せてくれました。でも今日の試合で勝利した後は、その時より10倍以上も良かったです。このようなゲームがあるからこそ、この仕事は楽しいです。最高です」
キャプテンの髙田真希は「簡単に言うと『やる時にやる集団』。そこがこのチームの良いところですし、今のチームの雰囲気もすごく良いです」と、現在のチームを表現した。つらい練習を乗り越え、多くの時間を共有しているからこそチームに連帯感は生まれる。本橋もその集団の一員としてチームに誇りを感じつつ、頂点を目指す。
「誰が出ても、誰かがダメでも、チームとしてまたステップアップできているのはこのチームの強みです。一人ひとりがチームのことを考え、自分の仕事を全うしようという姿を見られることが自分にとってもすごく刺激になっています。これまでと変わらずに日本のバスケットを貫き通すことが大事ですし、日本のバスケットで勝ちにいきます」