宮澤夕貴

先発に抜擢されて21得点「少しでもズレていたら打とうと思っていました」

3ポイントシュートを武器とする日本代表にとって、宮澤夕貴の復活は何よりもポジティブな材料だ。肩のケガが長引いてWリーグのシーズンは不本意な結果に終わり、長い代表合宿の中でも調子が上がらず苦しんだが、オリンピックが開幕して彼女は本来のパフォーマンスを取り戻した。グループリーグの3試合では3得点、9得点、19得点。昨日の準々決勝ベルギー戦では21得点を挙げた。

長らくベンチスタートでプレータイムも安定しなかったが、負ければ終わりの決勝トーナメントに入ってトム・ホーバスは宮澤を先発に据えた。「ベルギーには大きい選手が2人いて、4番ポジションのシューティングチャンスは絶対あると思った」と、指揮官はこの起用を説明する。

2日前のナイジェリア戦では3ポイントシュート8本中5本を成功させており、復調の気配は感じさせていた。「自分の役割は3ポイントシュートなので、打つべきところでは打とうと考えていました」と宮澤は語る。

日本の初得点はその宮澤が、町田瑠唯のパスを受けて迷わず3ポイントシュートを放って決めたもの。「自分のマークマンが4番の大きい選手だったので、目の前にいても少し間合いがあって、少しでもズレていたら打とうと思っていました」と語るように、ベルギーの強みであるサイズを逆に狙うことで、相手のリズムを乱した。

宮澤にとって、3ポイントシュートは自分を日本代表のエースにまで高めた武器であり、意識するようなプレーではない。彼女が意識していたのはディフェンスとリバウンドだった。「ハーフコートのオフェンスだけになってしまうと厳しいので、トランジションの中でどれだけ打てるかが大事。そういう意味ではディフェンスとリバウンドを頑張らないと日本のバスケットができません。それができない時に点数を取られてしまったのですが、途中で修正できて3ポイントシュートを打てる本数が増えました」

相手にリードされ、何とか食らい付く時間帯、「大丈夫、大丈夫。我慢しよう」と声を掛け合う中で、宮澤は「自分たちには3ポイントシュートがあるから、波が来れば大丈夫。だからこそ大事なのはディフェンスとリバウンドと考えていました」と振り返る。

「自分自身の仕事が3ポイントシュートなので、それを7本決められたのは良かったです。でも、大事なところで強くボールを持たなかったことで、ターンオーバーやリバウンドを取られたり、ディフェンスでもミスもあったので修正して次の試合に臨みたいです。今日の試合に勝ったことで、またこのメンバーと試合ができることがうれしいです」

トム・ホーバスは「彼女は長い間やっているから、入らない時も自信があります。空いてたら打つ。彼女は分かっています。彼女のペースで、こういうゲームになってもクールなシューティングができたと思います」と宮澤への信頼をあらためて語りつつ、それでもギリギリで勝利が転がり込む展開を思い出したのか「助かった」と笑みを漏らした。

エースの完全復活は、メダル獲得へあと一歩まで迫った日本代表にとって大きな力となっている。