田中大貴

「確実にワールドカップの時よりも戦えていると感じた」

7月26日、バスケットボール男子日本代表はスペインとの東京オリンピック初戦を77-88で落とした。第2クォーター途中に同点に追いつくも、そこから2-23のビッグランを許したことが敗因となった。

先発ポイントガードを務めた田中大貴も「入りは悪いなりに26-26のところまでイーブンだったんですけど、前半終わりの残り4、5分で一気にバッて行かれたのが、この試合を決めてしまったのかなと思います」と、その時間帯を悔やむ。

日本は特にNBAで豊富な経験を持つポイントガードのリッキー・ルビオに試合を支配された。ルビオは約22分間の出場で20得点9アシストを記録。出場時の得失点差はゲームハイの+27で、彼がコートに立つ時間帯はまるで別のチームかのようにスペインは機能していた。日本はディフェンス力の高い、渡邊雄太をマッチアップさせたがスクリーンでマークを剝がされるなど、彼を止めることができなかった。

「スカウティングで雄太がつくことになりましたが、やっぱり彼が起点となってどんどんプレーを作ってきますし、要所を締めていたのは彼で、ちょっと自由にやらせすぎたのかなと思います」と田中は冷静に戦況を振り返った。

それでも、20点前後のビハインドを背負いながらも一時は1桁点差に戻す粘り強い戦いぶりは評価に値する。田中が「前半の終わり方がすごくもったいなかったですが、それ以外を見ると確実にワールドカップの時よりも戦えているとみんなも感じたと思います」と語ったように、後半だけを見れば49-40と日本が上回っている。

だからこそ、第2クォーターに訪れた『魔の5分間』が悔やまれる。そこさえしのげていればと思わざるを得ない結果となったが、ビッグランを許してしまった部分が現在の日本の脆さでもあるのだろう。田中は言う。「こういう強いチームに勝つには、よりパーフェクトなゲームをしないとチャンスは巡ってこない。前半の終わり方は自分にも責任があると思いますし、そこは本当に悔やまれるというか。やっぱりそこは見逃してくれないなという印象が強いです」

田中大貴

歴史的1勝の実現に向け「チャレンジし続けるべき」

本日、2戦目となるスロベニア戦を迎えるが、スロベニアにはルビオを超える世界的ポイントガードのルカ・ドンチッチがいる。ドンチッチはオリンピック初戦で48得点11リバウンド5アシスト3ブロックとモンスターパフォーマンスを披露し、アルゼンチンを100点ゲームで破る立役者となった。田中も「50点近く取ってますし、どうやって彼のところを守るのか、しっかり準備しないといけない」と、ドンチッチをいかにして止めるかに焦点を当てている。

Bリーグトプクラスの2ウェイプレーヤーである田中は高い状況判断能力も持ち、サイズ不足を解消するためポイントガードにコンバートされた。スペイン戦の田中は約23分間の出場で2得点、チームハイの5アシストを記録したが、フィールドゴール6本中1本の成功と精度を欠き自分を責める発言をした。ターンオーバー0という数字は立派だが、見方を変えればゲームメークという部分でチャレンジできず、違いを生みだせなかったとも言える。

『コート上の監督』と表現されることもあるポイントガードというポジションは経験がモノを言う。コンバートされた田中に多くを求めることは酷だが、指揮官のフリオ・ラマスはその経験不足を乗り越える資質があると見込んだからこそ、彼に先発ポイントガードを託した。

田中は「勝たないと次に進めないですし、なんとか試合に勝つということを目標にやっているわけなので、チャレンジし続けるべきだと思います」とスロベニア戦に向けての意気込みを語る。ルビオとの対戦を経て、今まで以上にポイントガードの役割の重要性を痛感したはず。より強大な相手となるが、日本が『歴史的1勝』を手にするには田中のステップアップが求められる。