ドック・リバース

写真=Getty Images

「父親が息子をNBAで指導する快挙を達成したんだ」

NBAヘッドコーチ歴19年目のドック・リバースは、この夏に誰も経験したことがない苦しみを味わった。

このオフ、クリッパーズはオースティン・リバースと交換でウィザーズからセンターのマーチン・ゴータットを獲得。トレードを決めたのは球団だったが、実の息子にトレードを伝えたのは、指揮官であるリバースだった。

リバースは、この時の心境を『Boston Herald』にこう語った。

「息子が素晴らしいチームに行くことに関しては、何も難しくなかった。困ったのは、自分の息子をトレードする時に、何と声をかけていいのか分からなかったことだ。そんなことはコーチのマニュアルには書いていないからね」

2015年にサンズ、セルティックスとの3チーム間トレードで息子のオースティンを獲得したのは、当時チーム編成に携わっていたリバースだった。NBA史上初となる実の父親のチームで3シーズンもプレーしたオースティンは、『親の七光り』と批判された時期もあったが、NBAでも有数のコンボガードに成長。トレイルブレイザーズと対戦した2016年のプレーオフでは、試合中に左目の上を11針縫う裂傷を負いながらもプレーし続け、21得点8アシスト6リバウンドを記録し、その闘志が称賛された。新天地のウィザーズでは、ジョン・ウォール、ブラッドリー・ビールの控えとして期待されている。

リバースは、息子にトレードを伝えた時の会話について「オースティンの言葉に助けられた」と話した。

「息子には、こう言われたんだ。『僕たちは、これまでに誰もやっていないことを成し遂げたじゃないか。父親が息子をNBAで指導するという快挙を達成したんだ。こんなこと、誰が実現できると思う?僕は、それを叶える機会を得られたんだよ』とね」

NBA選手として一人前に成長したオースティンにとって、契約最終年となる今シーズンは勝負の年になる。コートで結果を残し、フリーエージェントになる来夏に新契約を勝ち取れれば、もう誰からも『七光り』呼ばわりされなくなるだろう。

NBA史上初の『親子鷹』となった2人は、今後それぞれの目標に向かって突き進む。