渡邊雄太

「ワールドカップから一人ひとりが成長できている」

バスケットボール男子日本代表は東京オリンピックで歴史的『1勝』を目指す。

日本人史上初となる、NBAドラフト1巡目指名を受けた八村塁はチームのトップスコアラーであり大黒柱だ。もちろん、彼のパフォーマンスが勝敗を左右する。それでも、田中大貴とともにキャプテンを任され、八村と馬場雄大が合流する前から日本を引っ張ってきた渡邊雄太には、八村と同等、もしくはそれ以上の活躍が求められる。

渡邊は保証のない状況から一つずつ信頼を勝ち取り、今シーズン途中にラプターズと本契約を結んだ。当然、『NBA選手』という肩書を持つ彼に期待は高まるが、そうした肩書を超える、自身が日本を引っ張っていくという覚悟が彼の行動から感じられる。実際に渡邊は「ワールドカップでもキャプテンに任命されましたが、リーダーシップという部分をあまり出せなかったです。この2年間でそういう部分が成長したことも見せたい。オールラウンドな活躍ができたらと思っています」と言う。

2年前に中国で開催されたワールドカップは、日本にとっては飛躍の場となるはずだった。予選では4連敗スタートから8連勝で本大会への出場権を勝ち取り、Bリーグ発足によるレベルアップに加えて渡邊がNBAデビューを果たし、八村がドラフト指名を受けたタイミングとあって、チームは最高の雰囲気でこの大会に臨んだが、結果は5戦全敗に終わった。世界との差を痛感させられたその大会から、日本はどれだけ前に進めたのか。渡邊はその成長具合を見てほしいと語る。

「僕を含めて、あそこにいたメンバーはあの時の悔しい気持ちを忘れていない。あの時から一人ひとりが成長できていると思うし、自分たちの成長を知る良い機会になる。ランキングをみたら圧倒的に相手が上だし、簡単な試合になるとは思いません。それでも自分たちには勝てる力があると思うので、自信を持ってやっていきたい」

渡邊雄太

「バスケットをさせてもらえていることに感謝しながらやっていきたい」

ラプターズでは3ポイントシュートとディフェンスを得意とする『3&D』プレーヤーとして起用されている。そのため、ディフェンスと3ポイントシュートに重きを置く現在の日本のスタイルに渡邊は難なくフィットするはずだ。「テンポを上げて、3ポイントシュートの本数を増やすことがこのチームの中で必要になってくる。サイズで劣る分、運動量やシュート精度で勝たないといけない。そこは僕が得意とする部分なのでチームに貢献できると思います」

ただ、格下の日本が世界と同等以上に戦うためには、やはり渡邊のオールラウンドな働きが欠かせない。渡邊も「代表で僕の役割は変わってくる」と理解している。実際に国際強化試合での渡邊は、3ポイントシュートだけでなく、プルアップにドライブとラプターズでは見せることのない多彩なフィニッシュで得点を量産してきた。

また、誰よりも声を出し、ベンチに下がっても席に座らずに味方を鼓舞し続け、多少のケガがあってもフリオ・ラマスヘッドコーチに出場を志願する場面さえ見られた。こうした熱い気持ちはチームメートに火をつけ、パフォーマンスを上昇させる効果がある。プレーだけでなく、こうした一つひとつの所作からも、彼が日本のリーダーであることは感じられる。

「努力をすることで実力や結果もついてきている。それを言えるだけの努力をしてきた」と自信に満ち溢れている渡邊は「自国開催でできるオリンピックは一生に一度のこと。コロナ禍でたくさんしんどい思いをしている方々がいる中で、自分たちは大好きなバスケットをさせてもらえていることに感謝しながらやっていきたい」と東京オリンピックへの思いを語った。努力で成功をつかみ取った者の姿は人々の心を動かす。オリンピックで彼の輝きは増すはずだ。