バックス

苦手なフリースローを19本中17本成功させたアデトクンボ

王手をかけたバックスのホームで迎える第6戦は1971年以来の優勝を見届けようと会場の外までファンが殺到し、ミルウォーキーの街は異常な熱気に包まれる中で始まりました。しかし、この熱気に反してお互いのオフェンスでパスミス、シュートミスが多く、低調な試合序盤となりました。それでもファンの熱気に押されたか、クリス・ミドルトンのジャンプシュートが決まり始めると、徐々にバックスが優位に立って行きました。

サンズは初得点こそデビン・ブッカーのミドルシュートだったものの、その後はクリス・ポール中心のオフェンスを展開します。ブッカーは1on1で見事なアンクルブレイクも見せるなど、止められていたわけではありませんが、試合序盤でのブッカーの負担を軽減するため、意図的にシュート数を減らしにいったような形でした。しかし、チームオフェンスでインサイドに侵入してもバックスの分厚い壁に阻まれてしまい、リズムが生み出せず、ミスからカウンターの速攻も決められてしまいました。

キャメロン・ペインが登場すると小気味よいリズムでアウトサイドのシュートを決めていきますが、バックスもベンチから登場したボビー・ポーティスが3ポイントシュートを連続で沈め、またヤニス・アデトクンポが苦手なフリースローもしっかりと沈めたため、13点リードを奪って1クォーターが終わります。

第5戦は2クォーター前半に16点差を逆転したバックスでしたが、今度はサンズが逆転します。ペインのドライブが決まり、キャメロン・ジョンソンも3ポイントシュートでベンチメンバーが得点を続けると、ディフェンスではミケル・ブリッジスがドリュー・ホリデーをオールコートで追い掛け回し、ゲームメークすることを許さず、苦しいシュートを打たせ続けました。前半のホリデーはフィールドゴール11本打って1本しか決められず、バックスのオフェンスは急激に停滞していきます。

ディフェンスでのホリデーはブッカーのマークを担当し、4点しか奪われなかったものの、これはブッカーの負担を減らしたいサンズの事情が大きく、ホリデーから解放されたクリス・ポールが次々にミドルシュートを決めていきました。サンズにとって『ホリデーを避ける』ことが重要なファイナルになっていますが、前半はポールが13得点を奪って5点リードで折り返します。

後半になっても同じマッチアップとなりますが、ブッカーがホリデー相手に仕掛けるとスティールから速攻に持っていかれ、早々にバックスが追いつきます。そしてアデトクンポはシュートが外れても自らリバウンドで押し込んでいく強引なプレーでバックスに流れをもたらし始めると、前半から沈黙していたブルック・ロペスの豪快なダンクも出てきます。

劣勢になったサンズは3人同時交代でゾーンディフェンスに変更するなど、細かい対応でバックスの判断ミスを促し、トランジションオフェンスでの打開を図りに行きました。アデトクンポの強引さには困るものの、狙い通り速攻も決まって盛り返し、同点で第4クォーターを迎えます。

先手を取ったのはポーティスとアデトクンポで得点を重ねたバックスでした。しかも、ディアンドレ・エイトンが5つ目のファウルでベンチに下がり、サンズはインサイドの戦いで苦しくなってしまいました。それでもポールがミドルシュートで繋ぎ、何とか4点差で残り5分に突入します。

お互いにハードなディフェンスが展開される中、ミドルトンがタフショットを決めるも、戻ってきたエイトンがゴール下で取り返せば、アデトクンポがフローターを決めると、ブッカーが速攻で取り返し、接戦のまま時間が過ぎていきます。

試合を決めたのはミドルトンでした。残り1分、アデトクンポが自分でドライブせずハンドオフでミドルトンに渡し、ミドルトンは流れながらのミドルシュートを決めて6点差としました。ポールのパスからブッカーが狙った3ポイントシュートが外れてしまい、その後のファウルゲームを逃げ切ったバックスが4連勝でファイナルを締めくくりました。

MVPに輝いたアデトクンポは50点14リバウンド、そして5ブロックと圧巻のパフォーマンスを披露しましたが、特にこの試合は苦手だったフリースローを19本中17本決め、サンズの追撃を許しませんでした。ファイナルでは59%しか決まっていなかっただけに、いつも通りの確率であれば試合は最後までどちらに転がるかわからなかったはずです。オフェンスでもディフェンスでもフル回転しながら、集中力を切らさずにフリースローまで決めきった完璧なパフォーマンスで、見事にチャンピオンリングを手にしました。