ヤニス・アデトクンボ

互いのオフェンスが噛み合う試合展開、ホリデーのスティールが決定打に

2勝2敗のタイで迎えたNBAファイナル第5戦は、サンズが序盤からリードする展開になります。ヤニス・アデトクンポのアタックには変わらず苦労するものの、早めのヘルプでパスを出させると、他の選手がシュートを打ち切れなかった瞬間にハイプレッシャーを掛け、スティールからの速攻を繰り出し、第1クォーターだけで37点を挙げて16点のリードを奪いました。

第4戦はバックスが17オフェンスリバウンドで圧倒しましたが、サンズにとって問題だったのは単にリバウンドが取れないことではなく、速攻を生み出せなかったことでした。両コーナーにシューターを置き、オフェンスリバウンドに3人が参加してくるバックスのリバウンド力は確かに脅威ではあるものの、選手の配置が前がかりになりすぎているため、ボールを奪った瞬間にカウンターのチャンスがあります。これを利用できなかった第4戦の反省から、攻守の切り替えを徹底しました。一方のバックスはサイドでスティールされても誰も戻れずに速攻を食らうこともあり、積極的な姿勢が裏目に出ました。

第2クォーターになって、エースのデビン・ブッカーを休ませている間にサンズは反撃を浴びます。第4戦もファウルトラブルでブッカーがベンチに下がった時間帯に逆転されましたが、ブッカー抜きではハーフコートオフェンスが組み立てられず、バックスのディフェンスがミスをした時くらいしか得点になりません。一方でバックスはアデトクンポがベンチに下がっていると逆にフロアバランスが良くなり、適切なスペーシングでオフェンスを組み立てるためミスも発生せず、内外バランス良く得点していき、開始4分にパット・カナートンの3ポイントシュートで逆転します。

両エースが戻ってくると、ブッカーがいることでバックスのディフェンスはブッカー以外のマークが甘くなり、アデトクンポがいることでサンズのディフェンスは的を絞りやすくなるという逆の現象が起きましたが、お互いに点を取り合う展開で試合は拮抗します。前半の両エースは同じタイミングで交代しましたが、2人がオンコートの時間帯はサンズが+11点、逆に2人ともベンチに下がっている時間帯ではバックスが+14点と明確なコントラストが生まれていました。

後半になるとブッカーがミドルシュートにドライブと圧倒し始めます。マークがPJ・タッカーでは相手にならないとばかりに、スピードで翻弄してズレを作ると、躊躇なく踏み切ってジャンプシュートを打ち、止めようと積極的に出てきたらファウルを誘って、ファウルトラブルに追い込みました。しかし、これによりマークがドリュー・ホリデーに代わるとファーストプレーでスティールからの速攻を決められてしまい、サンズのビハインドが10点に広がってしまいます。

サンズはタイムアウトからホリデーを避けるオフェンスで持ち直し、ゾーンディフェンスで流れを変えに行きました。このゾーンをバックスは攻めあぐねますが、ここでアデトクンポがミドルレンジのフェイダウェイを連発で決め、流れを渡しません。この試合でのアデトクンボはサンズの早いヘルプにドライブができず、あまり効果的なプレーができていませんでしたが、苦手なはずのシュートをタイムリーに決めていきました。結局このままバックスの10点リードで最終クォーターを迎えます。

追い上げたいサンズはブッカーやクリス・ポールのアウトサイドシュートで反撃していきます。この試合3本の3ポイントシュートすべてを決めたミカル・ブリッジスも続き、疲れが出る時間帯でも正確なシュートタッチで決めていきます。しかしホリデー、クリス・ミドルトン、アデトクンポと個人技でアタックしてくるバックスのオフェンスを止められず、時間ばかりが過ぎていきます。

それでも前半にファウルをセーブしていたことで、終盤になっても強気に守ることができたサンズは徐々に追い上げ、残り6分で6点差にします。勝負どころの時間帯になると、バックスはミドルトンがタフなミドル&ワンを決めるも、ポールが3ポイントシュートで決め返し、両チームが一歩も譲らないファイナルらしい接戦が展開されていきました。

バックスはこの試合29点、フィールドゴール成功率52%を記録したミドルトンに任せると、ディフェンスに追い込まれながらもタフショットを決め切る強みを発揮していきますが、アデトクンポはファウルで止められるとフリースローを決められず、終盤で得点が止まります。一方のサンズは時間を使わずに攻めていく中で、残り1分半にブッカーが3ポイントシュートを決めると、続いてポールがパスと見せかけてのプレーからドライブレイアップを決めて、土壇場でサンズが1点差に追いあげます。

残り30秒でマイボールにしたサンズはブッカーに託します。ブッカーはドライブで得意のゾーンに侵入しますが、マークのタッカーとヘルプのアデトクンポにシュートフェイクをした瞬間、無防備になったボールを後ろから近づいたホリデーに奪われました。ホリデーはそのままトランジションに持ち込み、後ろから走ってきたアデトクンポがアリウープダンク&ワンでねじ込むビッグプレーが決定打となり、バックスが123-119で接戦を制しました。

バックスはアデトクンポ、ミドルトン、ホリデーのビッグ3が5試合目で初めて全員が20得点を超え、3人で88得点とオフェンスが爆発しました。一方のサンズはまたも40得点を奪ったブッカーだけでなく、チームでフィールドゴール成功率55%、3ポイントシュート成功率62%と見事なオフェンスを展開し、これまで劣勢だったセカンドチャンスやペイント内得点でもバックスを上回りました。しかし、わずか8つに抑えたターンオーバーが最後の最後の勝負どころで出て、ホームゲームを落とすことになりました。

シリーズを通じてホリデーのディフェンスがキーポイントになっており、この試合でもサンズがオフェンスを構築する上で、ホリデーのマークを避けることが最も重要となっていました。しかし、最後はポールのマークだったホリデーがブッカーの死角を見事に突いたスティールで試合を決めています。お互いのオフェンス力が目立つ試合展開で、ホリデーの長所が光った第5戦でした。