ヤニス・アデトクンボ

カナートン「衝撃を受けたし、畏怖さえ感じたよ」

『伝説のクラッチブロック』が生まれたのは、NBAファイナル第4戦の残り1分15秒だった。

101-99でバックスが2点をリードした場面、サンズはデビン・ブッカーがディアンドレ・エイトンとのハンドオフからアタックする。ブッカーのマークに付いたPJ・タッカーがスピードで振り切られつつあり、ヤニス・アデトクンボはカバーしようと一歩寄った。この試合、すでに40得点を挙げていたブッカーをフリーにはできない。それでも、リムへと走るエイトンへのアリウープは今のサンズの十八番だ。ブッカーはアデトクンボがこちらに一歩寄る絶妙なタイミングで、リングへとボールを放り上げた。

「正直、ダンクを食らうと思った」と、アデトクンボはこの瞬間を振り返る。しかし、彼はすぐさまリングの方向にターンして跳躍した。すでにプレータイムは42分で、頭上を越えるボールを見送ってもおかしくなかったが、身体は勝手に動いた。

「勝つために必要なら何でもやるつもりだった。そうやって勝てる状況に持っていこうとしたんだ」

ブッカーはエイトンを信頼しており、彼の動きよりもバックスのディフェンスを自分に引き付けることに集中していた。ノールックで上げたロブパスはわずかに外にズレていたが、エイトンの運動能力であれば、空中で難なくつかんで叩き込めるはずだった。しかし、その小さなズレにアデトクンボの伸ばした手が飛び込み、ダンクを叩き落す。

バックスに勢いを与え、サンズのリズムを大いに狂わせるワンプレーだった。サンズはこのプレーオフを通して、クリス・ポールかブッカーが起点となり、エイトンとのピック&ロールからのアリウープを多用している。エイトンの身体能力の高さを最大限に生かすプレーであると同時に、それを意識させることでディフェンスをゴール下に釘付けにする。これにより、ブッカーとポールへのプレッシャーは軽減され、効率が悪いとされるミドルジャンパーを簡単に打ち、そして高確率で決めることができる。

バックスはこの攻めに苦しんできたが、この『クラッチブロック』が飛び出したことで、今後はサンズにこれを意識させ、リズムを狂わせることができそうだ。一度ではあっても、最強の武器を完璧な形で止めたことは大きい。

パット・カナートンは3ポイントラインにポジションを取ったジェイ・クラウダーをマークしており、離れた位置からこのブロックショットを眺めていた。「衝撃を受けたし、畏怖さえ感じたよ」と振り返る。

「史上最高のブロックだと思う。レブロン・ジェームズのチェイスダウンブロックが例に挙げられるだろうけど、ヤニスはピック&ロールをカバーしていて、エイトンがどこでボールを受けてダンクしようとしているのか探してブロックしなければいけなかった。だから、これ以上ない最高のブロックだと思うんだ」