女子日本代表

スピードを生かし、連動したプレッシャーディフェンスが効果を発揮

渡嘉敷来夢が膝の故障からの復帰が間に合わず、オリンピックに出られないと決まり、指揮官トム・ホーバスは悩んだ末に腹をくくった。世界を相手に高さで渡り合うのをあきらめ、サイズがない分はスピードを生かし、高さを攻守の組織力で埋めるスモールボールを突き詰める。長い代表合宿の中でこのスタイルを突き詰めながら、レベルの高い選手選考をくぐり抜けた12人は、そのバスケを体現する精鋭たちだ。

今日のベルギー戦、明後日のプエルトリコ戦が、オリンピック前の最後の試合となる。先月の国際強化試合と比べて、日本代表の攻守の遂行力は各段に高まっていた。町田瑠唯と三好南穂の小さな2ガードが試合開始からアクセル全開、スピードだけで突っ掛かるのではなく、周囲と連動してスペースをお互いに作り出しては生かした。

髙田真希はゴール下で盤石の安定感を見せ、長岡萌映子と赤穂ひまわりも運動量とバスケIQの噛み合った動きで攻守を支える。日本はキックアウトからのワイドオープンで躊躇せず打ち、また外一辺倒にならずリムアタックの姿勢も十分に見せて、スモールボールの良さを存分に見せた。

それでもベルギーもオリンピックに出場する世界ランキング6位の強豪だ。エースのエマ・ミースマンを中心に、こちらは高さに頼らずバランスアタックで日本のディフェンスの穴を確実に突いてきた。

追いかける展開となった日本だが、要所要所でビッグプレーが出る。1点ビハインドで迎えた前半の最後にはオールコートプレスを仕掛け、サイズのあるベルギーはプレスの上にパスを通してこれをかいくぐろうとするのだが、一の矢、二の矢がかわされた先のパスを三の矢である町田が狙っており、スティールからワンマン速攻に持ち込み、逆転してハーフタイムへ。

ケガ明けの本橋菜子と宮澤夕貴はまだコンディションを上げる必要があるようでプレータイムが短かったが、その他の選手はそれぞれチームバスケットの中で個性を発揮。宮崎早織はWリーグを席巻した突破力と得点力を出し、オコエ桃仁花は力強いプレーで大黒柱の髙田がいない時間帯を支えた。

三好南穂

三好南穂は17得点「後は自分が決めるだけでした」

後半も一進一退の攻防になるが、第4クォーターになって先発の5人がコートに戻ると、一段階上のコンビネーションを発揮。走れる選手が揃うラインナップで町田はイキイキとボールを動かし、巧みにフリーになる三好が次々とシュートを沈めていく。またディフェンスでも相手に仕掛ける『攻めどころ』の意識が共通していることでプレスが効き、ターンオーバーから速攻へと繋いでリードを広げていった。残り1分10秒、馬瓜エブリンの3ポイントシュート成功で点差を2桁に広げたところで勝負アリ。最終スコア84-76で日本代表が快勝した。

5本の3ポイントシュート成功を含む17得点を挙げた三好は「チームメートがノーマークにしてくれてパスをくれたので、後は自分が決めるだけでした」と自分のプレーを誇りはしなかったが、「悪い時間帯もあったんですけど、すぐにディフェンスで立て直して自分たちの速いバスケットに持っていけました。プレッシャーを掛けてターンオーバーを誘う、自分たちは小さいので、そういう面は通用したと思います」と、長い合宿で練り上げたチームバスケが機能したことは大いに誇った。

チームの大黒柱にして精神的支柱でもある髙田は「機動力のディフェンスを自分たちの強みとしていかないと勝っていけない。練習で積み上げたことが出せたのは自信になりました」と手応えを語るとともに、「目標としている金メダルに近づけるように。明後日もう一回良いパフォーマンスをしてオリンピックに臨みたい」とコメントした。