デイミアン・リラード

代表の試合中にレイカーズファンから「ロサンゼルスへ来てくれ」の声

デイミアン・リラードの周辺が騒がしい。ポートランドの街への忠誠を誓い、トレイルブレイザーズと2025年までの長期契約を結んでいる彼に移籍の噂が出るはずはなかったのだが、テリー・ストッツ解任からチャウンシー・ビラップスの新ヘッドコーチ決定までの意思決定の拙さ、その間にファンから向けられた理不尽な敵意が、リラード移籍の可能性を生んでいる。

ブレイザーズはリラードの加入2年目となる2013-14シーズンから8シーズン連続でプレーオフに進出しているが、そのうち5回はファーストラウンド敗退。最高成績は2018-19シーズンのカンファレンスファイナルで、この時はウォリアーズにスウィープ(4連敗)と一蹴されている。直近の2シーズンはいずれもファーストラウンド敗退。優勝したレイカーズに敗れたのはまだしも、ケガ人を抱え十分でなかったナゲッツに敗れた今シーズンの結果は重い。

リラードは現在のNBAでも最強のポイントガードの一人だが、7月15日で31歳となる。トップレベルでプレーできるのはあと数年。全身全霊を込めて戦っているが、その負担が多すぎて最後は力尽きる、というパターンを繰り返している。ブレイザーズとの契約を全うしてNBA優勝に手が届くのか、彼がそれをシビアに考えてしまっても無理はない。

2019年オフに契約延長に応じた際には、リラードには何の迷いもなかった。「ブレイザーズ史上最高の選手になることは、自分の中でバスケットボールより大きなもの」と語るとともに、「MVPと優勝を勝ち取る」と宣言している。しかし今、その深さがどれほどのものかは彼自身にしか分からないが、リラードとブレイザーズの間には溝ができている。

リラードは代表キャンプ中の会見で移籍について「言わなければいけないことがあれば、チームのGMに直接言う。ここで何か言うことはない。たくさんの噂が出ていて、時にはそれを目にすることもあるけど、僕は何も言っていない」と発言を拒んだ。

今はアメリカ代表のトレーニングキャンプに参加中。7月13日に行われたアルゼンチン代表とのエキシビジョンゲームでは、ラスベガスまで観戦に訪れたレイカーズファンのグループから「ロサンゼルスへ来てくれ!」、「デイム、君の将来はレイカーズとともにある!」というチャントで熱烈な勧誘を受けた。

レイカーズは『すぐに優勝できるチーム』としては一番手だ。しかし、すでにレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスを擁するレイカーズがリラードを獲得できるとすれば、デイビスを手放すという選択肢しか考えられないし、それはあり得ない。現時点で最も有力とされるのはベン・シモンズのトレード交渉を始めたセブンティシクサーズだ。シクサーズのダリル・モーリーは、ロケッツ時代に様々なビッグネームのトレードを成立させてきたGMだ。シモンズは今回のプレーオフで株を下げただけに、リラードと1対1のトレードというわけにはいかないだろうが、リラードが本気で移籍を考えているとなれば、あらゆる手段を尽くすに違いない。