ディアンドレ・エイトン

「ジャンプボールから試合終了まで150%の力でプレーしている」

サンズとクリッパーズのカンファレンスファイナル第2戦は、終盤になるにつれて緊張感が高まり、様々な出来事が巻き起こった。デビン・ブッカーは自分のアタックを止めに来たパトリック・ベバリーの頭突きを顔面に食らい、鼻から大出血を起こした。イビチャ・ズバッツの軽率なターンオーバーはビデオ判定の結果、クリッパーズボールになり、彼は戦犯になることを免れた。ポール・ジョージがクラッチタイムに難しいミドルジャンパーを涼しい顔で決めたかと思えば、フリースローを2投とも外してサンズに最後のチャンスを与えてしまった。

サンズが最後のチャンスを得たのは残り8秒、102-103と1点ビハインドの場面。ブッカーは自分にダブルチームが来た瞬間にパスをさばいて、マイカル・ブリッジズのコーナースリーに繋いだものの、これが決まらない。アウト・オブ・バウンズでマイボールでのリスタートにはなったが、残り時間は0.9秒しかなく、チャンスは潰えたかに見えた。

あとはアリウープしかない状況で、ディアンドレ・エイトンにマークが集中するのは当然のこと。エイトンはまずキャメロン・ペインにスクリーンを掛けに行って相手の注意を引き付け、そこから一気にリムアタックする。追いかけるズバッツをブッカーがスクリーンで止め、エイトンを走らせた。そこにジェイ・クラウダーが完璧なアリウープパスを送る。慌てて戻ったズバッツの手は届かず、エイトンが押し込んで逆転。サンズがそのまま勝ちきった。

エイトンは言う。「ジェイのお手柄だよ。完璧なタイミングで7フッターの選手(ズバッツ)が届かない絶妙なコースにパスを出してくれた。それにコーチが描いたオフェンスもすごかった。僕が良い位置に走り込めたのはチームメートが信じてサポートしてくれたから。ブッカーのスクリーンは完璧だったよね。あとは簡単、僕は自分の身体能力を生かして得意なフィニッシュをしただけだ。すべてが噛み合ったけど、やっぱり一番すごいのはジェイのパスだと思う」

クリッパーズの選手たちはゴールテンディングを主張するが、得点は認められた。ただ、それまではヤキモキする時間があって、劇的な逆転アリウープを喜んではいられなかった。エイトンは「正直、不安だったよ。自分自身で確信が持てなかった。それまでのジャッジに少しストレスも感じていたしね」と振り返るが、サンズ指揮官のモンティ・ウィリアムズは明確に言い切った。「シュートじゃないからいつダンクしても大丈夫。ルールは理解していたよ」

エイトンは24得点14リバウンド、ペインは29得点9アシスト、そしてブッカーは20得点5アシスト。クリス・ポールの欠場は続いているが、チームは勝負強さを発揮した。終盤こそ大混戦になったが、試合を通じて点差は大きくなくてもサンズがほとんどの時間帯でリードする展開だっただけに、クリッパーズに対してあらゆる面で上回ったと言っていい。

クリッパーズはこれで2敗。ベバリーは「苦しみながらも勝ちに持っていった試合だったから受け入れるのは簡単じゃない。でも僕らは以前にもこのような状況に追い込まれている。いつだってそうだけど、勝負はこれからだ」とホームでの巻き返しを誓う。

ブッカーの鼻は恐らく骨折している。ねじ曲がり、大きく腫れた鼻を覆う医療用テープを慎重に触りながら、それでも明るい表情で彼は「ちょっとはマシになったかな」と話す。「もし負けていたら今より断然痛かっただろうから、勝てて良かったよ。これから検査をして、マスクの準備をしなきゃいけないんだ」

そして殊勲のエイトンは、負け続けていた自分たちが大舞台で堂々の戦いを演じていることを喜びながらも、地に足を付けて敵地での2連戦に臨もうとしている。「ここまで来れていることは本当に大きな意味があると思う。毎回が最後の試合だと思ってコートに入っているし、ジャンプボールから試合終了まで150%の力でプレーしている。こんなの今までに経験したことがないよ。いつもは頑張っても110%だ。これは大袈裟じゃなく、試合に入り込む集中力は本当に150%だと思う。それぐらいの気持ちで戦っているよ」