ジョエル・エンビード

「目標は優勝だし、今はプレーオフだけに集中している」

セブンティシクサーズはホークスとのカンファレンスセミファイナル初戦を落とし、この第2戦を迎えた。エースのジョエル・エンビードはこの試合も膝のケガを押して強行出場。初戦を落としたことで気迫で上回るシクサーズは、試合開始からミスマッチを作り出して強引に押し切るトバイアス・ハリスがレイアップにダンクとイージーシュートを連発して早々に2桁のリードを作り出した。

第2クォーターはセカンドユニットが支えきれずに点差を詰められ、主力を戻してまた突き放す展開に。57-49で迎えた残り1分、シクサーズにピンチが訪れる。ダニーロ・ガリナーリと接触して倒れたエンビードが怒りで我を忘れ、ガリナーリを後ろから突き飛ばす。フレグラント2で一発退場かと思われたが、ビデオ判定の結果は両者にテクニカルファウルに。シクサーズ優位の流れを台無しにしかねない軽率な行為に、エンビードは背筋を冷やしたに違いない。

この時点でエンビードの個人ファウルは3つ目で、シクサーズにとっては大きなリスクとなっていたが、すぐにハーフタイムを迎えて頭を冷やすことができたのは幸いだった。そして後半、落ち着きを取り戻したシクサーズは攻守とも様々な課題を解消させる。ホークスが守備を修正したことで、序盤のようにハリスがイージーな得点を連発することはなくなり、第3クォーター途中に一度は逆転を許すのだが、その直後にジョージ・ヒルのアシストを受けたシェイク・ミルトンが3ポイントシュートを決めた。

これはシクサーズにとって非常に大きい得点だった。第3クォーター残り2分19秒までベンチメンバーの得点はなく、これがホークスを楽にさせていた。それでもミルトンはここからアグレッシブに攻め、4本の3ポイントシュート成功を含む14得点を記録。ベンチユニットの時間帯でも互角に渡り合い、そして主力を戻すことができた。

エンビードがゴール下を支配する状況だと、追う側のホークスは厳しい。さらにホークスを厳しくしたのは、後半のシクサーズがイージーなミスをしなかったことだ。前半は6つあったターンオーバーが後半は1つだけ。その1つも試合終了間際、ホークスが試合をあきらめてプレーを止めた状況でのバイオレーションで、実質的にターンオーバーではない。ベンチポイントは後半だけで26。付け入る隙のない試合運びでシクサーズが1勝1敗のイーブンに戻した。

エンビードは35分の出場で40得点13リバウンドを記録。膝の半月板を一部損傷しているとは思えない力強いパフォーマンスだった。トバイアス・ハリスは「コートに出れば言い訳はできない。これはプレーオフで、NBAのシーズンを戦い抜いて100%のコンディションの選手なんていない。フロアに一歩踏み出した時には勝つための意欲を持っている、それが彼だよ」と語っている。

この試合が始まる前にレギュラーシーズンのMVPがニコラ・ヨキッチに決まった。ステフィン・カリーとともに最終候補の3人に入っていたエンビードは落選となったが、「残念ではあるけど、気にはしていない」と語る。「自分でコントロールできることは限られているからね。チームとしては素晴らしいレギュラーシーズンだったし、僕もその一部だった。でも、MVPは自分ではコントロールできない。僕の目標は優勝だし、今はプレーオフだけに集中している。優勝トロフィーを掲げた時には、他のことはすべてどうでもよくなるさ」と落ち着いた口調で語った。

トバイアス・ハリスもこう続けた。「心配いらないよ。ヨキッチも素晴らしいシーズンを送ったんだから、彼のMVP受賞を祝福したい。もちろん、ジョエルも素晴らしいシーズンを送った『僕らのMVP』だよ。ファンも彼にMVPコールを送っているしね。今はファイナルに進出し、そこでジョエルにMVPを取らせたい。それが僕らのメンタリティなんだ」