ポール・ピアース

写真=Getty Images

「何としてでも成し遂げるんだ、という危機感を持つこと」

ポール・ピアースは2016-17シーズンを最後に現役引退、『34』が永久欠番となったセルティックスのレジェンドだ。ピアースが不在となった昨シーズン、セルティックスは新たなチームの『顔』となったカイリー・アービング、ベテランのアル・ホーフォード、そしてケガからの復活を期すゴードン・ヘイワードの3選手を軸に、ジェイソン・テイタムを筆頭とする伸び盛りの若手を擁し、東カンファレンスのトップチームになるとともに、優勝が期待されている。

ただ、NBA優勝を果たすためには戦力を充実させるだけでなく、もう一つ欠かせない要素があるとピアースは説く。『Boston.com』の取材に応じたピアースは、「才能のある選手が揃っている以上、自己犠牲の精神を学ぶ必要がある」と語る。彼自身も2007-08シーズンに個人よりチームを優先し、キャリア初優勝を成し遂げた。

2006-07シーズンに平均25.0得点を記録したピアースにとって、07-08シーズンはキャリア全盛期にあたる。しかし、07年のオフにケビン・ガーネットとレイ・アレンが加わり『ビッグ3』を結成することになった後、彼はチームを機能させるため、個人スタッツを犠牲にすることを受け入れた。実際に、優勝した07-08シーズンは平均19.6得点にスタッツは落ちているが、セルティックスは開幕から8連勝でスタートダッシュに成功。年明けまで連敗を記録することなく、ピアース、ガーネット、アレンのチームはチームケミストリーを早い段階で築き、球団史上17回目の優勝へと突き進んだ。

「本気で優勝したいのなら自己犠牲が必要だ。個人ではなくチームを優先できれば、多くの試合に勝てる。タレントレベルは十分なんだ。あとは、選手たちが自己犠牲の精神を持ってプレーできれば優勝できる」と、現在のチームにエールを送ったピアースは、ロッカールームのリーダーが、エゴや嫉妬心を捨てなければならないとも説く。

現在のチームリーダーの一人であるアービングは、今シーズン終了後に契約最終年を破棄してフリーエージェントになることが濃厚だ。他チームへの移籍も視野に、大型契約を希望してフリーエージェント市場に打って出るアービングが、果たしてチームを優先するだろうか。そんな意見もある中、ピアースは心配はいらないと言う。

「彼は優勝を経験している。もしセルティックスが優勝すれば、カイリーが希望するだけの契約を手にできる。優勝によってすべてが自分にプラスになることを、彼は体験済みなんだ。優勝が全員にとっての勝利になることをね」

もし今もセルティックスの選手で、NBAファイナル進出をかけた東カンファレンス決勝が第7戦にまでもつれた場合、チームメートに何と声をかけるかと質問さると、ピアースはこう答えた。

「次のシーズンでは負傷者が出るかもしれないし、オフに移籍する選手も出るかもしれないわけで、その時しかチャンスはないんだ。自分がその場にいたら、『俺たちに明日なんてない。今しかないんだ。これは俺たちにとってのチャンスだ』ということを全員に理解させるだろうね。『このメンバーで一緒に戦える最後の試合になるかもしれない。そんなことになっても良いのか? 俺はそうは思わない。まだまだ証明しないといけないことがある』とでも言うかな。実際にはもっと乱暴な言葉を使い、厳しい言い方になるだろうけれど、何としてでも成し遂げるんだ、という危機感を持つことを強調すると思う」

レブロン・ジェームズが西カンファレンスのレイカーズに移籍し、2018-19シーズンは東の優勝争いも激しいものになると予想されている。アービングを筆頭にオールスター選手が中心となり、全員がチームの勝利のために自己犠牲を惜しまない姿勢を出せるのであれば、セルティックスは昨シーズンよりもさらに強力なチームになり、『次の一歩』を踏み出せるはずだ。