デイミアン・リラード

テリー・ストッツが退任、リラードの動向に多くのクラブが注目

デイミアン・リラードとトレイルブレイザーズの9シーズン目は、プレーオフのファーストラウンド敗退に終わった。ナゲッツとのシリーズは白熱し、リラードは第5戦の55得点を含め、6試合で34.3得点、10.2アシストを記録したが、それでも十分ではなかった。これまでのシーズンと同様にリラードが孤軍奮闘し、擦り切れるまで消耗して、最後は惜しくも力尽きて敗れる構図は変わらなかった。

しかし、ブレイザーズは変わろうとしている。ナゲッツとの第6戦に敗れて2勝4敗での敗退が決まった直後、リラードは「現状では十分でないのは明らかだ」と発言。ナゲッツのジャマール・マレーとウィル・バートンがケガで不在だったことを挙げ、「先発のポイントガードとシューティングガードがいなかったチームを相手に、ファーストラウンドを突破できないようでは、チャンピオンになるには不十分だ」と語っている。

それから一夜明け、球団はテリー・ストッツの退任を発表。リラード加入から常にチームを指揮し続けていたヘッドコーチがいなくなる。リラードは単なるフランチャイズプレーヤーの域を超え、ポートランドと深い結び付きがあり、ヘッドコーチ交代が彼とブレイザーズの別れを意味するものではないが、すでにいくつかのチームがリラード獲得に動くと噂されている。

ニックスとヒートの名前がすでに挙がっており、クリッパーズとレイカーズもこれに続くだろう。彼らのリラードに対するアプローチは、「十分でないのは明らか」なのが今シーズンに限ったことではなく、今後もそうだと思わせること。ストッツを解任し、新しいコーチが来れば物事は解決するのか。今オフに31歳になるリラードにとって、今その決断をしないことは主役としての優勝をあきらめるのと半ば同じ意味だ。

それでもケビン・デュラントが、カワイ・レナードが、アンソニー・デイビスが移籍先のチームでNBA優勝を勝ち取り、オフシーズンのビッグネームの補強がタイトルの行方に大きく意味を持つ今であっても、リラードはブレイザーズを去る決心をするだろうか。ブレイザーズと長期契約を結んだだけでなく、ポートランドの人々と相思相愛の関係にあり、今は近郊に土地を買って自分のバスケコートを作っている。昨シーズンのプレーオフでクリッパーズと険悪なムードになった際には、SNS上で煽ってきたポール・ジョージに対して「頑張って移籍し続けろよ」との皮肉を返した。その彼がポリシーを曲げて移籍するだろうか?

昔気質の男を動かすには、人の縁が必要かもしれない。『New York Post』はニックスにリラードが来ることを願いつつ、トム・シボドーの下でアシスタントコーチを務めるジョニー・ブライアントの存在がカギになると報じている。ブライアントはリラードと同じオークランドの出身で、10代だった頃のリラードのワークアウトを担当している。リラードがウェーバー州立大にいた頃には、同じユタ州でアカデミーを運営しており、リラードの練習を見ていた。リラードは彼について「僕の兄貴のようなもの」と表現している。

トレードには相当な代償が必要であり、リラードの4375万ドル(約48億円)の契約を吸収するのも簡単ではないが、どのチームにとってもリラードはその折り合いを付ける努力に見合う選手だ。ニックスは今後3年間で1巡目指名権を5つ持っており、RJ・バレット、イマニュエル・クイックリー、オビ・トッピン、ミッチェル・ロビンソン、ケビン・ノックスをトレードの駒に使うこともできる。カワイ・レナードが今の契約を破棄しない限りは、今オフのフリーエージェント市場にリラード以上の選手はいないだけに、彼を獲得できる可能性があるなら逃すわけにはいかない。

一方でリラードは、ストッツの後任にジェイソン・キッドを後押ししているとの報道もある。いずれにしても、まずはリラードの決断次第。激闘のシーズンを終えた今、彼は何を思うのだろうか。