2019年に心臓発作で倒れ、62歳の今年に引退を表明
セルティックスの2020-21シーズンは、プレーオフのファーストラウンドでネッツに1勝4敗で敗退に追いやられて幕を閉じた。
それから一夜明けた現地6月2日、大きな発表があった。ダニー・エインジが引退し、ブラッド・スティーブンスが後任の球団社長になるという『人事異動』だ。セルティックスの関係者の大半が、プレーオフを戦っている間はこのことを全く知らされていなかったそうだ。
2003年からこの職務に就いてきたエインジは、2008年にケビン・ガーネットとレイ・アレン、ポール・ピアースの『ビッグ3』で22年ぶりの優勝を球団にもたらした。それだけではなく、この18年間でプレーオフ出場15回、カンファレンスファイナル出場7回、NBAファイナル2回、そして優勝1回と、戦力均衡化のための仕組みが整備されたNBAにおいてこの名門チームを常に強豪の位置に押し上げてきた。
問題があったのは2年前の4月だ。心臓発作を起こして救急搬送され、しばらく職務から離れた。入院している間、家族はエインジの身を案じ、セルティックスの試合を見ることを禁じ、スマホも取り上げてニュースからも遠ざけた。情熱的すぎることが身体への負担になり、心臓を悪くしているのではないかと考えたからだ。
この時、セルティックスのフロントで働くエインジの息子は「家にいるより、セルティックスのために働く方が父はストレスなく過ごせる」と語り、健康を取り戻したエインジは元の職務に戻った。彼にとって、セルティックスを強くすることは生き甲斐だった。しかし、勝負の世界は苛烈で、心労は計り知れない。62歳になった今、彼は第一線から退くことになった。
エインジは2003年にセルティックスのGMに就任し、それから現在に至るまでチーム作りを主導してきた。この間にチームを任せた指揮官は2人だけ。ドック・リバースと、ドックの後釜として大学バスケ界から引き抜いてきたブラッド・スティーブンスだ。そのスティーブンスは2013年からここまでチームを任され、卓越した戦術を駆使して勝ちを重ねてきた。ただ、彼も長いヘッドコーチ生活に疲れ、最近では大学バスケ界に戻るのではないかとも噂された。その彼はエインジから今回の人事を相談され、フロントへ転身する決断を下した。
今回の発表に際し、エインジは「セルティックスの今後を託せるのはブラッド以外にいない」と、そしてスティーブンスは「私はセルティックスを愛しているし、この仕事に伴う名誉と責任の大きさを知っている。常に優勝争いができるチームを作るために全力を尽くす」とのコメントを発表している。
今オフはエインジとスティーブンスが二人三脚で編成の舵取りをするそうだ。最初の任務はスティーブンスの後任となるヘッドコーチ探し。セルティックスは新たな時代に向けて動き出す。